鹿町工 隙突き逆転 決勝点は2点スクイズ

【準決勝、波佐見-鹿町工】7回裏鹿町工1死二、三塁、山下が2点スクイズを決める=県営ビッグNスタジアム

 鹿町工が初の夏制覇に王手をかけた。4強の中で最高打率を誇る波佐見に12安打を許しながらも粘り強く守り、逆に相手の虚を突いて逆転勝ち。「ありがとう」「ナイスゲーム」とスタンドから送られた盛大な拍手に、大樂院監督は「今、こいつらが歴史をつくっているんだなと、かみしめている」と笑みを浮かべた。
 決勝点は2点スクイズだった。七回に2-3と迫り、なおも1死二、三塁で4番の山下。攻守の大黒柱だが、初戦から前の打席まで19打数1安打だった。「ずっと迷惑ばかり掛けてきた。監督からも“あるぞ”と言われていたので、打ちたい気持ちより、最低限の仕事と思った」。初球を投前へ転がした。
 そこから主役になったのは二走新立。前進守備につけこんで目いっぱいリードを取ってスタートを切ると、捕球した相手に「こっちを見る雰囲気がなかった」。瞬時にトップギアに入れて本塁ヘッドスライディング。「二塁走者の判断で」と代々反復してきたプレーだっただけに、指揮官も「勝負どころで決まって歴代の先輩も喜んでいるはず」とうなずいた。
 この1点リードを山下が今度はマウンドで守りきった。自己最速136キロを記録した直球に豊富な変化球を織り交ぜて、九回は、それまで3安打ずつ放っていた相手4、5番を連続三振に。最後の打者を遊ゴロに仕留めると、何度も拳を握り締めて達成感を表現した。
 勝っても、負けても、あと1試合。茶色の土で全身を汚した新立は全員の思いを代弁した。
 「最高の笑顔で、最高の高校野球生活だったと言いたい」


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