石塔に子どもの成長祈る 対馬、伝統「ヤクマ祭」

海岸の石を積み重ねた「ヤクマの塔」に向かって手を合わせる青海地区の住民=対馬市峰町青海

 長崎県対馬市中部西岸にある峰町の木坂(きさか)、青海(おうみ)両地区で26日、海岸の石を積み上げて円すい形の塔を築き、男児の健やかな成長や家内安全などを祈願する「木坂・青海のヤクマ」(ヤクマ祭)があった。
 峰町誌などによると、「ヤクマ」は旧暦6月の初午(はつうま)の日を指す。太陽を神格化した「天道信仰」に由来し、積み上げた石塔は「ヤクマの塔」と呼ばれる。両地区のヤクマ祭は2012年、国の選択無形民俗文化財となった。
 今年は7月26日が旧暦6月で初めての午の日で、両地区とも午前中に祭りがあった。このうち青海地区では午前9時ごろ50~80代の住民10人が集まり、海岸にある大小の石を積み上げて約30分で石塔(高さ約2メートル)1基を構築。住民はお神酒を掛けて拝んだ。
 青海地区には、昭和40年代前後に26世帯計約150人の住民がいたものの、少子高齢化で現在は16世帯計約40人に減少。子どもはこの数年生まれていないが、伝統を絶やさないため毎年石塔を建てている。同地区の阿比留冨士雄さん(82)は「地区が安全であるように祈った。青海にまた子どもの歓声が戻ることを願っている」と話した。

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