農業法人モロフジファーム 長崎進出5年 耕作放棄地活用 本格化

ハウスでの水耕栽培で生産されたリーフレタスの収穫作業=平戸市田平町

 長崎県平戸市の基幹産業の一つ、農業を取り巻く環境は厳しく、耕作放棄地が年々広がっている。その耕作放棄地などを集約し、効率的な経営に取り組む農業法人「モロフジファーム」(同市田平町、11人)が本県に進出して5年が経過した。同社は昨年から本格的な生産活動を始めており、耕作放棄地の活用事例として注目されている。

 同市によると、市内の総農地は2019年末現在、約4500ヘクタールで、15年の約4900ヘクタールから約8%減少した。
 耕作放棄地も同期間で約1700ヘクタールから約1400ヘクタールに減少している。これは統計上、農地から外され耕作放棄地でなくなった土地が増加しているためで、16~19年の4年間は毎年20~40ヘクタールの新たな耕作放棄地が確認されている。耕作放棄地の多くは小規模で、効率的な農業が難しいのが現状だ。
 こうした耕作放棄地を活用しようとモロフジファームは15年、松浦市内で「地のものファーム」として創業した。合成樹脂製品などの取り扱いを祖業とするモロフジホールディングス(福岡市)のグループ会社。耕作放棄地を複数借り上げ大規模に展開することで、効率的な農業を目指している。
 18年に平戸市田平町南部に拠点を移し、モロフジファームに社名を変更。同町、松浦市星鹿町と合わせて耕作放棄地5.5ヘクタールを借りて、ほ場として整備した。ほ場は平戸に集約していく予定。
 ほ場では、本県が開発したジャガイモの新品種「ながさき黄金(こがね)」を栽培。ほ場とは別にビニールハウス約1.3アールで太陽光利用型水耕栽培を取り入れた、リーフレタスの栽培を18年に始めた。温度・湿度管理、換気を徹底し、外部からの害虫、農薬などの侵入を防止。安定した環境の中、年間を通じて4品種を出荷できる体制を整えている。
 19年から本格的な生産が始まり、リーフレタスは月産約1万5千個、ジャガイモは昨年秋作で約1万3千キロを出荷。近隣の宿泊施設などにも納品している。同社は田平町内のほ場を徐々に拡大させ、出荷量の増加を図っていく。このほか、生産品目を増やし市場ニーズに対応できるようカボチャやニンニクなどの試験栽培にも取り組んでいる。同社近くにある、県立北松農業高からここ数年、採用を続け、農業後継者育成にも力を入れている。
 同社の諸藤俊郎社長は「まず、平戸を拠点に西九州の商圏で事業展開を図り、今後、生産品目を強化して、平戸、松浦の農産品を全国に広めたい」と地域の農業と全国の市場をつなぐ構想を視野に入れている。
 平戸市や県農業振興公社にとっても耕作放棄地の活用は課題の一つ。同公社は起業を目指す農業法人と、農地を生かしたい所有者を結ぶ施策として農地中間管理事業に取り組む。平戸市は耕作放棄地のうち、復元、活用が可能な農地の調査を継続し、同公社と情報共有を進めている。

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