「避難」と「感染対策」 両立難しさ浮き彫りに… 長崎県内各地で大雨

避難所に身を寄せる住民ら。家族間で間隔を空けている=25日午後0時10分、佐世保市の「させぼっくす99」

 新型コロナウイルス感染拡大後、長崎県内で初めて大雨による避難指示・勧告が25日出された。各自治体は感染対策をしながら避難者を受け入れたが、検温など必要な対策に手が回らなかった避難所もあり、「避難」と「感染対策」を両立する難しさが浮き彫りとなった。
 記録的な大雨に見舞われた佐世保市は、午前7時半までに27カ所の避難所を開設。道の駅「させぼっくす99」(愛宕町)には同11時ごろまでに24人が身を寄せた。職員が同9時ごろに到着した際には、すでに10人以上が避難。一人一人に口頭で体調確認したが、開設準備で忙しく、検温まで手が回らなかった。
 高齢の家族3人で避難した市内の女性(77)は「身の安全を優先することで精いっぱい。感染対策を考える余裕はなかった」と明かした。
 県は感染対策に関する内閣府などの通知を受け、避難所の開設・運営における対策チェックリストを作成。▽家族間で約2メートルの間隔の確保▽発熱などの症状がある人専用のスペースの確保▽十分な換気▽頻繁に手が触れる場所の1日2回以上の消毒-などを求めている。各自治体はチェックリストなどを参考に独自のマニュアルを作成し、対応に当たった。
 佐世保市も、避難所対応に当たる職員を各施設1人から原則2人に増員。避難者が入室する際に非接触型体温計を使って検温し、定期的に消毒や換気をするなどの対策を決定。避難前に必ず自宅で検温するよう、ホームページや広報誌で呼び掛けていたが、突然の豪雨発生に対応が後手に回った部分もあった。
 「させぼっくす99」に避難した女性(29)はマスクや除菌ウエットティッシュを持参。「避難所にどれぐらいの人がいるのか分からず、密にならないか心配だった。人数が分かるように、情報発信してほしい」と求めた。市職員は「一斉に住民が避難してきた際の対応には課題が残る」と話した。
 西海市は1人が一時避難した。市防災基地対策課は「24日に消毒や検温の手順など、避難所開設訓練をしたばかり。今回は大事には至らなかったが、これからの豪雨、台風シーズンに備え、手順やノウハウを職員間で共有していきたい」とした。


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