米海軍佐世保基地のコロナ対策とは 現状を取材 社会的距離の確保徹底 感染発生時の情報開示に課題

「ソーシャル・ドリンキング」を実践しながら飲食を楽しむ米兵ら=米海軍佐世保基地(米軍準機関紙スターズ・アンド・ストライプス提供)

 新型コロナウイルス感染症は、在日米軍基地にも対応を迫っている。これまでに米海軍佐世保基地でも感染者1人が確認された。長崎県内で感染状況は一定落ち着きを見せ、再流行に備えた「新しい生活様式」が提唱されている。基地内ではどんな対策が取られているのか現状を取材した。
 同基地は12日、新型コロナに関する警戒レベルを5段階のうち2番目に高い「チャーリー」から、3番目の「ブラボー」に引き下げた。同基地関係者は、3月26日の発令以来、約2カ月半ぶりに行動制限が緩和された。
 新型コロナ流行以降、基地の町・佐世保で米兵の姿をほとんど見かけなくなったが、警戒レベルが下がって以降、多くの米軍関係者が佐世保市中心部のアーケードに買い物などで繰り出すようになった。マスク姿の男性軍人(26)は「基地の中での生活は窮屈。基地外を歩けるのはうれしい」と話した。
 佐世保基地で40代女性の感染が発覚したのは4月3日。日米合同委員会の合意に基づき、基地側から連絡を受けた市が公表したが、所属や感染ルートなどについては一切非公表。市は「感染拡大はない」との見方を示すが、基地内で感染者が発生した場合の情報開示の在り方について課題を残した。
 基地という一定閉ざされた場所で感染者を出さないため、米軍側も取り組みを強めている。
 市によると、昨年4月1日時点で同基地には軍人、軍属、家族計7374人が在籍。1747人の日本人従業員が出入りしている。基地が定めた行動制限に関係者は従わなければならず、日本人従業員は「最大限可能な範囲」で従うよう推奨されている。
 基地外での行動制限はだいぶ緩和されたが、バーやナイトクラブの利用、アルコール購入などは18日現在も不許可。違反者がいないかどうか、米海軍の警備隊が夜間パトロールをして監視している。部隊の公式行事も原則屋外で実施。ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保を徹底し、ハグや握手など身体的接触を伴うあいさつも禁止された。
 行動制限が続く一方、同基地はストレス軽減策として、一定の距離を保って飲食を楽しむ「ソーシャル・ドリンキング」を企画。5月29日から週2回、基地内でビアガーデンを開き、米兵らの息抜きの場となっている。同基地は「新型コロナのリスクがある間は、今後も予防対策は続けていく」としている。

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