<いまを生きる 長崎コロナ禍> 一般診療減で経営圧迫 長崎みなとメディカルセンター 門田院長

 新型コロナウイルスへの対応により、地域医療にはどのような影響が出ているのか。感染症指定医療機関の一つ、長崎みなとメディカルセンター(長崎市)の門田淳一院長(65)に現状と今後の展望を聞いた。

 -院長に就任した4月に長崎港に停泊していたクルーズ船で集団感染が発生した。
 長崎は感染症の専門医が全国で1番多く、患者情報が一元管理されており、コロナ対策の組織体系は進んでいるなと感じていた。ただ、クルーズ船は想定外。長崎医療圏(長崎・西海両市、西彼時津・長与両町)の受け入れ態勢はまだ確立できていなかったが、クルーズ船を対応する中で構築されていった。もし今、長崎医療圏で感染者が出ても早期段階における体制はある程度整っている。

「一般診療が縮小し、経営は非常に厳しい」と語る門田院長=長崎市新地町、長崎みなとメディカルセンター

 -コロナ対応による一般診療への影響は。
 コロナの疑いのある患者の受け入れには通常より看護師の人数が必要。(クルーズ船の対応時は)看護体制を強化するために一部を休床にし、感染症患者用に配置した。その結果、一般診療を縮小せざるを得ず、急を要しない手術も待ってもらわざるを得ない状況になった。コロナ禍での一般診療や救急体制をどうするのか、議論を急ぎたい。
 一方で二次感染の心配から患者自身の受診抑制、地域の医療機関からの紹介患者の減少などで縮小された側面もあり、受け入れ病院には一種の風評被害ともいえる負の側面もみられた。

 -病院経営への影響は。
 極めて厳しい。今後も2波、3波に備え、受け入れ態勢を維持するため、診療の縮小はある程度覚悟しなければならない。病床稼働率でいうと、採算ラインを大きく下回っている。現状が続けば、コロナの重症者に対する病床数が足らなくなるという医療崩壊とは別に、当院に限らず病院経営が成り立たなくなる危険性もある。市、県、特に国にはすぐにでも財政支援をお願いしたい。

 -長崎県内は感染者が少ない。
 岩手県がゼロなど地域によって感染数に差がある理由は分からない。(感染確認が続く)北九州のようになる可能性は否定できないが、潜在的に無症状の陽性者がいるとしても、少なからず有症者が出てくるはず。長崎でこれだけの間、有症者とPCRの陽性者がいないということは、無症状者も限りなくゼロに近いのではないかと想像する。

 -今後の展望は。
 コロナのこれまでの状況をみると(指定医療機関に入院が必要な)指定感染症からはまだ外せないだろうが、将来的にはインフルエンザのような対応をしていくのが理想。そのためには治療薬とワクチン開発が大前提だが。重症になりやすいリスクなども明確になると、開業医の先生たちのように第一線で診療する医療従事者らも対応できるようになるのではないか。いつ、その状況までもっていけるか、そこは医療従事者にとって精神的にも、肉体的にも、病院の経営的にも今後の極めて重要な問題だ。

 


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