ネット総文祭 行方どうなる「百人一首かるた部門」

「開催されるなら参加したい」。いちるの望みを胸に札を払う長崎北高の3年生=長崎市小江原1丁目、同校 後輩(右)に丁寧に技術を指導する五島高の3年生=五島市池田町、同校

 高知県で今夏予定されている全国高校総合文化祭(総文祭)は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため初めてインターネットを活用して開かれる。パフォーマンスは動画などをネット公開する見通し。一方、向き合って眼前の札を素早く払う競技「小倉百人一首かるた」は、遠隔での対戦が困難。正式な大会概要はまだ発表されていないが、県内の部員らは、かるた部門の行方を案じながら部活動に取り組んでいる。
 総文祭かるた部門は本県では例年、県予選で個人戦を勝ち抜いた上位8人が混合チームを組んで出場している。しかし今年はコロナの影響で4月に予定した県予選を開催できていない。
 県立長崎北高は、昨年の総文祭(佐賀県)で代表2人が出場。高校日本一を決める同年の小倉百人一首競技かるた全国高校選手権大会(滋賀県)でも県代表として出場を果たした。今年は選手権大会2年連続出場と総文祭を目標に掲げていた。だが選手権大会は4月末、中止が決定。吉田早織さん(17)=3年=は「練習に身が入らなくなった。総文祭や県大会もかるた部門がなくなったら、試合せずに引退となるので不完全燃焼」とうつむく。
 3年生は、活動終了となる「句切り」を6月5日と設定し、マスクや手洗いなど感染防止策を徹底しながら日々、後輩を指導。昨年の総文祭県代表、荒木美帆さん(17)=同=は「どんな形になっても開催されるなら参加したい」といちるの望みをつなぐ。主将の濱本真衣さん(17)=同=は「正直、試合はもうできないと覚悟している。1年生に試合する姿を見せたかった」とぽつり。それでも「百人一首かるたは恋愛の気持ちをつづった和歌もあり、読むだけでも興味深かった。静寂の中のコミュニケーションがとても心地よく3年間頑張れた。後輩に託したい」と語る。

 県内で強豪の一角を担う県立五島高の3年生は、1年越しの雪辱を期していた。昨年、選手権大会への切符を懸けた県予選で、長崎北高に1枚差で惜敗。だが今年はその大舞台自体が無くなった。「最大の目標を失い何をすべきか分からなくなった」。中村諒香さん(17)=3年=はやるせなさが募ったが、こうも思った。「今こそ、後輩に技術を丁寧に教えられるのではないか」
 専門の指導者がいない五島高では、先輩から後輩へしっかり技術を伝えるのが伝統。離島で他校と練習試合をする機会も少なく、部員同士で鍛え合ってきた。磯沖千陽さん(17)=同=は「先輩や部員に負けないよう技術を学んで自分のレベルが上がっていくのが楽しかった。今は私たちが後輩を育てる番」と語る。
 後輩育成という目標を掲げつつ、3年生は集大成の場を確保できるのか。総文祭かるた部門は県予選があるのかすら分からない。
 「あこがれの先輩のように全国でやりきって引退したいと思っていたけど…」と田中日菜子部長(17)=同=。総文祭で最後の挑戦はできるのか、それとも-。不安と闘いながら今日も畳の上で札と向き合う。

 


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