コロナ余波で新人芸妓デビュー“おあずけ” 喜久奈さん「今は稽古あるのみ」

「いつお座敷に呼ばれても行けるように今は稽古あるのみ」と前を向く喜久奈さん=長崎市丸山町、長崎検番

 それまで着物に袖を通したことはなく、日本舞踊も未経験だった。福岡県内の単位制高校に通いながら、どこか縁のない土地で自立したい、と考えていた。あれこれ調べるうちに、長崎検番のホームページに目が留まった。実際に稽古を見学して「もう進学や他の仕事をしている自分が想像できなくなった」。両親も背中を押してくれた。
 昨年9月から長崎で暮らす。踊りの稽古は1日2時間を週4日。「姿勢を保つのがとても難しい」。自宅でおさらいを欠かさず、長唄や鳴り物も学ぶ。福岡に時折戻り、卒業に必要な残りの単位も取った。
 4月13日、3年ぶりの新人として晴れてお披露目…のはずが、新型コロナウイルス流行の余波で踊りは取りやめに。それでも、かつらに裾曳(び)きという重さ十数キロの正装をまとい、「身が引き締まった」。転ばないかと緊張し料亭を挨拶回り。翌日は筋肉痛だった。
 ちまたに自粛の空気が張り詰め、お座敷の数はめっきり少ない。「大変な時にデビューしたのも話のネタになる。いつ呼ばれても行けるように今は稽古あるのみです」。そう自らを鼓舞し、姐さんたちの所作や話術に目と耳を凝らす。

© 株式会社長崎新聞社