クルーズ船員の回復願い折り鶴 県内外から多数 FBきっかけ 市民有志 横断幕も手作り

クルーズ船の乗組員を励ます折り鶴を箱詰めする市民=長崎市、出島ワーフ

 新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船コスタ・アトランチカの乗組員を励ます折り鶴が、長崎市民有志の呼び掛けで県内外から多数集まった。きっかけはフェイスブック(FB)のつぶやき。市民の思いが会員制交流サイト(SNS)で広がり、共感を呼んでいる。

 呼び掛け人は長崎市千歳町の村上矯正歯科の村上久夫院長(58)。4月下旬、乗組員の集団感染が判明した当初、SNSでは批判のコメントが多かった。
 ただ、村上さんはアジア人として欧州の学会に温かく対応してもらった経験がある。中国で感染が拡大した2月、欧州でアジア人を排斥する空気が強まった。3月に地中海のマルタ島で開催される学会に「アジアから参加すると迷惑ではないか」。そう思い学会に連絡を入れると「温かく受け入れます」と返答があった。その後、欧州で感染が広がり学会は延期されたが、クルーズ船の乗組員をわが身に置き換え、「温かく受け入れ、困難な人を支えるべき」と思ったという。
 乗組員に折り鶴を届けたいとFBに書き込むと賛同が広がった。県議の江真奈美さん(53)が「折り鶴大作戦~鶴の港、折り鶴に祈りを込めて~」と題したFBのグループを作って支援し、これまでに170人以上が参加。乗組員の回復や無事を願って折られた鶴が県内にとどまらず、名古屋市や北九州市から届いた。
 8日、FBでつながった有志が長崎市出島町の出島ワーフのテラスに集まり、数え切れないほどの折り鶴をビニールや箱に詰めた。
 西彼時津町浜田郷の団体代表、阿部美和子さん(53)は「家族を置いてきた乗組員を思い、みんな何かしたいと思っていた。鶴の港と呼ばれた長崎港から折り鶴が世界に飛び立ってほしい」と願いを込めた。
 クルーズ船の運航会社はイタリアにあり、イタリア語で「私たちはいつもあなたのそばにいます」と書いた横断幕も仲間が手作りした。
 折り鶴と横断幕は運航会社の地元代理店を通じて届けるという。

「私たちはいつもあなたのそばにいます」とイタリア語で書いた横断幕

© 株式会社長崎新聞社