専門家調査「感染管理は厳格」 長崎・クルーズ船内 居住区分け課題も 停泊中のコスタ・アトランチカ 

乗組員が個室隔離されているクルーズ船の客室。ドアの前の台に生活物資が置かれている=25日撮影(厚生労働省クラスター対策班 国立感染症研究所感染症疫学センター提供)

 長崎市香焼町の三菱重工業長崎造船所香焼工場に停泊中のクルーズ船コスタ・アトランチカ(イタリア船籍・8万6千トン)の乗組員148人が新型コロナウイルスに感染した問題で、船内に入った国立感染症研究所感染症疫学センターの島田智恵主任研究官は27日、感染管理状況について「厳格にされている」との認識を示した。一方で「陽性者と陰性者がいつまでも同じ船の中にいるのは限界がある」と懸念も示した。
 島田氏は24日から船内に入り、感染対策などを確認。県庁で27日にあった会見で、25日に撮影した写真を使って船内の状況を説明した。陽性者と陰性者の居住区を分けるゾーニングについては「消毒がいっぺんにはできないので非常に難しい」と話し、両者を分ける方法がないか協議を進めていることを明かした。
 生活ごみがパンク状態で処理などが課題だが、乗組員はもともと窓のない船の底の部屋で生活していたため、窓のある客室での個室隔離は比較的いい住環境と説明。26日からは感染症への知識が不足している乗組員に感染経路の正しい知識を助言し、不安解消に努めているという。
 島田氏によると、乗組員が隔離されている部屋には「レッドゾーン(汚染地域)」の表示があり、ドアの前に設置された台には船の運営に従事するエッセンシャルクルーが運んだ日用品が置かれている。陽性者と接触しないよう、物資の手渡しはされていない。
 感染者が確認された後はエレベーターに「4人しか乗らないで」と書かれた紙が張られた。エッセンシャルクルーが使う食堂の入り口には「手洗いをしてください」と掲示。食堂の中では、離れた席で食事をするクルーの姿が写真に収められている。
 島田氏によると、アトランチカはもともとインフルエンザなどの対策に比較的熱心で、船内の診療室に続く廊下の床には乗組員同士が距離をとって並ぶよう印がある。エッセンシャルクルーは現在、1日2、3回の体温検査などで健康管理をしているという。

 


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