特攻艇「震洋」実寸大模型の展示を計画 ネットで資金募る

水上特攻艇「震洋」の実寸大復元模型。現在は倉庫に保管されている=川棚町

 太平洋戦争末期に旧日本海軍が開発した水上特攻艇「震洋」隊員の慰霊碑がある東彼川棚町新谷郷の住民らが、碑の近くに「震洋」の実寸大復元模型を展示しようと、クラウドファンディングで資金を募っている。模型は現在町内の別の場所に保管。移設を望んでいた前総代の故・廣川英雄さん(2月に82歳で死去)の「遺志」を継ごうと周囲が動いている。
 震洋は海軍唯一の水上特攻艇。全長5メートルほどのベニヤ板製の船に爆薬を積み、体当たりで敵艦を攻撃した。同郷に訓練所が設置されたことから、元隊員らでつくる「特攻殉国の碑保存会」が戦後に慰霊碑を建立。3511人を祭り、毎年5月に同郷が慰霊祭を開いている。
 復元模型は、在京テレビ局が5年前に戦後70年の企画で製作。当時の設計図や写真を基に、可能な限り再現した。全長約5.4メートル、幅約1.8メートルで、操舵(そうだ)席に座ることもできる。番組収録後、テレビ局から同郷に寄贈されたが、置き場所がなく、約5キロ離れた中組郷の町郷土資料館に展示。今は町観光協会が倉庫で保管している。
 前総代の廣川さんは生前、慰霊碑を訪れる人の案内や説明も担った。「当時の状況を具体的に伝えられる」と復元模型の同郷への移設を望んでいたという。死後に総代を引き継いだ寺井理治(おさむ)さん(73)は「熱心に取り組んでいたので心残りだったろう。模型は当時の隊員の心境を想像する一助になり、子どもたちの平和学習にも役立つ」と話す。
 慰霊碑がある公園の一角に展示館を建て、ガラス越しに復元模型を見学できるようにする構想。資金はクラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で6月29日まで募り、500万円を目指す。5千円から支援でき、金額に応じた返礼もある。
 寺井さんは「できれば来年の慰霊祭までに完成させたい。戦争の歴史を後世に伝えるために力を貸してほしい」と呼び掛けている。

慰霊碑前で復元模型展示に向けた支援を呼び掛ける寺井さん=川棚町新谷郷

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