長崎県壱岐市長選 終盤情勢 コロナ禍 両陣営に影 組織戦も候補「不在」 白川氏 狙う浮動票に影響か 森氏

選挙ポスターの掲示板を眺めるマスク姿の市民=壱岐市郷ノ浦町

 任期満了に伴う壱岐市長選は12日の投開票に向け、終盤戦に入った。4選を目指す無所属現職の白川博一候補(69)=自民、公明推薦=、無所属新人で元「壱岐しごとサポートセンターIki-Biz」センター長の森俊介候補(35)による一騎打ちの構図だが、新型コロナウイルス感染症の影響で目立った動きに乏しく、両陣営とも支持拡大に焦りを募らせている。
 告示以降、白川候補の選挙カーは事務所から動いていない。市内で感染者が相次ぎ確認され、候補者自身が現職市長として陣頭指揮に当たっているためだ。
 同市長選で初めて自民・公明両党の推薦を得た。事務所には国会議員や県内の首長らの「ため書き」がずらりと並び、白川候補は「組織力を生かして戦う」と息巻いた。コロナ対策のため自身は選挙活動を封印するという決断を「人命を優先する責任ある対応」と評価する声もある。
 だが、強固な後援会組織も、候補者の不在には「両手両足をもがれたような状態」(陣営関係者)だ。「白川市長は選挙ばやめたとですか」という質問も陣営に寄せられている。
 ある支持者は島内各地を回る対立候補の選挙カーを横目に「本人が有権者と直接会うのには及ばない」と苦い表情。組織力で有利とみられていた現職陣営だが、関係者は語気を強めた。「今回は危ない。選挙は一晩で変わる。特に一騎打ちはね」
 対照的に、森候補は連日島内各地で遊説を繰り広げ、草の根での支持拡大を図っている。
 旧4町の地元意識が強い同市。白川候補が町長を務めた旧芦辺町と比べて、人口最大の旧郷ノ浦町は現職の批判層が一定存在する。移住者で地縁血縁に乏しい森候補にとって同町の票の取り込みは最重要だ。同町が地盤で、前々回の市長選で白川候補に約1300票差まで迫った元JA壱岐市組合長は森候補を全面支援。陣営関係者も「さすが大御所。地元の人も覚えている」と助っ人の存在を喜ぶ。
 だが、コロナ禍の影響は森陣営にも影を落とす。島内は営業自粛の事業所や外出を控える市民が多く、遊説の効果は限定的だ。島内の防災無線では連日、白川候補が感染予防を訴えており、森候補の支持者は「放送自体が白川候補のPRになっている」とぼやく。未曽有の危機に際し、行政経験が豊富な白川候補を再評価する有権者の存在も無視できない状況だ。
 両陣営ともに気をもむのが投票率の低下。前々回、前回と、ただでさえ低下傾向だったが、今回は感染拡大の影響で争点もぼやけ、過去最低の数値は避けられないとの見方が強い。
 白川陣営は主な支持層である高齢者が外出を自粛している状況に言及。高齢者層が投票を見送れば打撃になりそうだ。浮動票の取り込みを狙う森陣営にとっては、投票率の低下が、組織戦を展開する対立候補を利する結果になりかねないと警戒する。集会の自粛などで票が読みにくい中、両陣営とも引き締めを図る。
 有権者数は2万2129人(男1万450、女1万1679)=4日現在、市選管調べ=。

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