緊急事態宣言 長崎県観光業窮地に ゴールデンウイーク直撃か

土産物店が並ぶ坂道。観光客の姿はまばらだった=長崎市南山手町

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言が7都府県に出された7日、長崎県内の観光事業者からは「客がさらに減る」と悲鳴が上がった。長崎市有の文化観光施設も10日から一斉休館。修学旅行生が大勢訪れる書き入れ時を直撃される本県の基幹産業は窮地に立たされている。
 同市南山手町の大浦天主堂やグラバー園につながる石だたみの坂道。外国人観光客らの歓声が消えてしばらくたつが、3月はまだ卒業旅行の学生の姿が見られた。それも今はない。
 ある土産物店は3月の売り上げが前年比で半減以下に。修学旅行生ら対象の工芸品作り体験もキャンセルが相次ぐ。緊急事態宣言後はさらに客足が遠のくと警戒し、販売部長は「店を続けられるか…先が見えない」と不安を隠さない。8日に周辺の店やホテルの関係者が集まり、対応を協議する。
 まち歩き観光「長崎さるく」は6日から30日まで休止。事務局の長崎国際観光コンベンション協会は、予約済みの約100人に感染拡大防止へ理解を求めた。修学旅行生向けの長崎平和ガイドは、4月に受け入れ予定だった全25校からキャンセルの連絡があった。
 端島(軍艦島)は台風被害で約5カ月間、上陸が禁止され、2月21日に再開されたばかり。しかしクルーズ利用客は戻らず、運行会社の一つ、軍艦島コンシェルジュ(同市常盤町)は3日から運休。「ゴールデンウイークまで事態が収束せず、閉鎖が延びるようだと予約が入らず厳しい」と頭を抱える。
 「50年この業界にいるが、こんなことは初めてだ」。ホテルの矢太樓(同市風頭町)の村木營介会長はこう嘆く。1954年の創業以来初めて本館を一時休止し、南館だけで営業している。3月の稼働率は前年同月比で6~7割ダウン。長崎大水害や雲仙・普賢岳災害でも苦しんだが、「今回は終わりが見えない」。
 稲佐山観光ホテル(同市曙町)は利用が極端に少ない日は休館し、他のホテルを案内している。営業担当者は政府の緊急経済対策について「ありがたいが、損失は億円単位。とても間に合わないのが現実」と言う。長崎にっしょうかん(同市西坂町)は6日から6月末まで「お客さまと従業員の健康的な環境を守る」として本館と別邸を休止し、新館に集約している。
 逆境の中でビジネスチャンスを探る動きもある。
 市内3ホテルを運営する長崎スカイホテルチェーンは3~6月、修学旅行が全て解約となり、計3億円の減収に。そこで、ホテル長崎(同市立山2丁目)の空き室をテレワークに活用するプラン(8時間2980円)を企画。公衆無線LAN「Wi-Fi(ワイファイ)」を完備し「自宅より仕事に集中できる環境」を会員制交流サイト(SNS)で発信すると、予約も入ったという。

 


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