佐世保と安全保障 水陸機動団発足2年<上> 増した存在感 海自、米軍と“一体化”進む

離島防衛を想定した水陸両用作戦の訓練で、輸送艦「くにさき」から発進する水陸両用車=昨年11月。鹿児島県、種子島沖

 島嶼(しょ)部の防衛を主な目的とする陸上自衛隊水陸機動団(本部・佐世保市大潟町)が発足し、27日で2年を迎えた。県外部隊を含め約2100人で新編したが、将来的には3千人規模まで拡大する見通し。米軍や海上自衛隊との共同演習を重ね、存在感が国内外で増す中、運用をめぐる課題も生じている。現状を探った。

 昨年11月14日、鹿児島県の種子島沖。海上自衛隊の輸送艦「くにさき」から、水陸両用車が、荒れた海に勢いよく発進した。この日、離島防衛を想定した水陸両用作戦の訓練の一部が報道陣に公開された。陸海空合わせて約1500人、水陸両用車16両などが参加。機動団は過去最多の約800人を動員した。
 水陸両用作戦には陸海空の3自衛隊の連携が欠かせない。機動団の青木伸一・団長(当時)は「(機動団の)能力は上がっている。この陸海空統合のスタイルも出来上がりつつある」と手応えを語った。
 海外での大規模な訓練も重ねてきた。昨年4月~7月には初めて海上自衛隊の長期訓練に団員約30人が参加。ベトナムやシンガポールなど5カ国の軍隊と交流した。乗船した田中保和3等陸佐は「艦艇内の限られた環境で練度を保持する方法など、具体的な課題を見つけることができた」と振り返る。
 今年1月~2月には、米海兵隊との実動訓練「アイアン・フィスト」が米国であり、第2水陸機動連隊が初めて参加。同じ時期には沖縄県で、米軍との水陸両用作戦の共同訓練を初めて実施。日米の“軍事一体化”は確実に進んでいるという見方もある。
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 地域への認知度も上がっている。団本部が置かれた相浦駐屯地がある相浦地区自治協議会の山口久雄さん(69)は「全国に一つしかない部隊なので敷居が高く、住民との関わりは難しくなると思っていたが、地域のイベントに積極的に参加してくれる。応援したい」。一般社団法人水陸機動団全国後援協会の村中弘司会長(88)は「佐世保に精鋭部隊があることは抑止力になるので心強い。隊員の家族らが住みやすい町にしたい」と語った。
 視察は今年2月までに国内外合わせて約150団体3800人に上った。日本の安全保障に詳しい米ランド研究所のスコット・ハロルド氏は「機動団は着実に成長をしている」と評価。その上で「機動団が発展する速度と規模は、中国の脅威が増大する速度と規模には十分に適応できていないのではないか」とも指摘した。

 


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