「住民の協力で治安守れる」 稲佐署 最後の署長・中根純一郎さん 稲佐署3月31日閉庁

「管内の治安維持は地域住民の協力があってこそ」と感謝の気持ちを語る中根署長=稲佐署

 132年の歴史がある稲佐署(弁天町)が31日、閉庁する。管内の飽の浦・淵・福田地区は長崎署(尾上町)に、小江原・手熊・式見地区は浦上署(大橋町)に移管される。閉庁後、庁舎と土地は一般競争入札の対象となる。今春定年退職する中根純一郎署長に、管轄エリアの今後の治安維持などについて聞いた。

 -刑法犯認知件数の推移は。
 稲佐地区は、三菱を中心に造船の町として栄えていた。半面、殺人や強盗などの凶悪事件を含め、15年ほど前までは年間500件近く発生。それが昨年は86件、一昨年は75件と、近年は100件を下回るまでになった。過疎化なども一因だが、防犯啓発や事故防止活動の効果があったと思う。

 -課題は。
 管内人口は約4万4千人、高齢者率は約31%(昨年末現在)。高齢化の進行が早い。警察活動の呼び掛けに反応しない高齢者もいる。そうした人の意識をどう高められるか。県警全体としても高齢社会への対応策を考えないと。
 二輪車事故も多い。昨年1年間、管内で発生した負傷者を伴う交通事故は117件。このうち二輪事故の割合は約31%で、県平均の15%を上回っている。各署に情報を引き継ぎ、対策を図っていきたい。

 -閉庁に対し地域住民は。
 「不安」もだが「なくなることがさみしい」という声が多い。歴代署員が地域との信頼関係を構築してきた証拠だろう。閉庁・統合は時代の流れ。一定、理解してもらっているのではないか。

 -自身も今春定年退職する。
 小榊地区で生まれた。拝命は1983年。最後の1年を故郷を抱える署長として、閉庁を見届けることができ感慨深い。警察行政にご協力いただいた方々には何より感謝したい。地域の治安維持は地域の協力があってこそ成り立つ。

31日に閉庁する稲佐署

© 株式会社長崎新聞社