爆心地から2.3キロ 被爆カキノキ治療 「寿命全うできるよう」

被爆カキノキの治療にあたる久保田さん=長崎市若竹町、森田さん方

 原爆で被害を受けた被爆樹木の保存に取り組んでいる長崎市は27日、同市若竹町の森田隆さんが所有する被爆カキノキの治療現場を報道陣に公開した。
 市は2017年度から、日本樹木医会県支部の協力を得て「被爆樹木パトロール」を実施し、爆心地から3キロ以内の被爆樹木30本の状態を観察している。本年度はこのうち11本を治療している。
 森田さん所有のカキノキは爆心地から約2.3キロに位置。高さは約7メートルで、樹齢は不明。27日は長崎市の樹木医、久保田健一さん(52)らが治療に当たった。
 カキノキは被爆で損傷し、腐朽が進む根元部分に発泡ウレタンを詰めている。久保田さんは劣化したウレタンを除去。代わりに特殊な土を空洞部に詰め、腐朽を防ぐ薬剤を塗って処置した。倒木防止用のワイヤが幹に食い込んでおり、一部を撤去して新たなワイヤを設置した。
 久保田さんは「被爆しても残っている木は強い。できる限り寿命が全うできるよう治療を進めれば、元気に生きる樹木を見ることができると思う」と話した。
 市は18年12月、被爆樹木の保存や整備を目的とした「クスノキ基金」を設置。基金から被爆樹木の保存費用を賄うことで、所有者の費用負担は従来の4分の1からゼロになった。

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