14~16日の3日間で407.3キロを走った第69回郡市対抗県下一周駅伝大会は、3日連続の日間首位で2位以下との差を広げ続けた大村・東彼が2年連続19度目の総合優勝を飾って幕を閉じた。長崎市の長崎新聞社前発着の42区間で11チームが競った令和初の大会。季節外れの暖かさから一転、雨や強風にも見舞われた中、9チームが前回タイムを上回り、区間新記録が4区間で生まれた。2位以下の日間順位争いも白熱していて、見応えのあるレースだった。
■「3強」崩れる
大村・東彼は第1日1区林田(瓊浦高)を皮切りに3日間で区間賞11個を獲得。23個だった昨年の半数以下になっても、2位長崎に20分近くの差をつけた。前評判通りの層の厚さが勝因だが、長い道のりの中で、その力を余すことなく披露。一人一人の1秒ずつの積み重ねで記録を伸ばしていく駅伝の魅力を存分に示した。
最多優勝回数を誇る長崎は壮年区間の本村(長崎中央郵便局)が3年連続区間賞。初めて総監督も務め、練習から本番まで自ら背中でチームを引っ張った。ベテランの頑張りに高校、大学生の若い力も呼応。区間賞は六つながら、大村・東彼と同じく終始、堅実にたすきをつないだ。
健闘したのは佐世保。平成時代の3位以内は1回だけだが、西彼・西海を退けて「3強」の座を奪った。直前の実業団選手の欠場などアクシデントもあった中、市民ランナーを中心に各世代で浸透している「エースに頼らない駅伝」をやり通した。
■“原石”が好走
4位西彼・西海は小学生区間で初優勝。大会後のチームの打ち上げでは来年の「3強」奪回を誓い、悔しい思いをした選手たちが今後の目標を色紙に書いて発表した。5位諫早は2年連続の躍進賞でAクラスへ。中でも、教育実習中の原田(順大)の主要2区間の区間賞は見事だった。
6位以下も粘走した。対馬は初の4位以上を狙える位置で走り、小学生区間は昨年の優勝に続いて2位。島原半島は高校生が区間賞三つを奪い、最終日は10区まで日間3位につけた。五島も最終日に9区田村(福江中)が区間賞、7区川原(三井楽中)が区間2位と好走。“原石”はどこにでもいることを教えてくれた。
上位と下位のタイム差は今年も大きかったが、9位北松・松浦はOBを含めた松浦高勢がチームを引っ張り、10位壱岐は雨海(中央発條)が大会最優秀選手に輝いた。11位平戸は第1日から50代3人が他チームの若い選手と一般区間を力走するなど、苦しい台所事情を全員でカバー。それぞれの地域に元気を与えた。
■“凱旋”に期待
一方で、来年70回を数える大会を続けて、ジュニア育成にもさらにつなげていくためには、各郡市の人口に見合うチーム編成や、小中学生、女子、シニアが少ない区間の区分なども再考の余地があると感じた。
チームで言えば、北松(佐々、小値賀町)と松浦市の人口は計約3万8千人、壱岐市は約2万5千人、平戸市は約3万人。長崎市の約41万人には遠く及ばない。区間の見直しを含めて各種連携や運営上の難しさ、賛否の声もあると思われるが、それぞれの立場で大会が一層有意義なものになる手段を考えていきたい。
最後に、壱岐の雨海をはじめ、それぞれ区間新をマークした西彼・西海の江口(駒大)、佐世保の廣田(麗澤大)ら各地域出身の実業団、大学選手の参戦はチームに活力を与え、次世代の憧れの的にもなる。ある総監督が「古里で走りたいという気持ちに加え、しっかり結果を出すことが大事」と話したように、来年以降も数々の“凱旋ラン”が大会を彩ってほしい。
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◎3日間の総合成績
順位 チーム名 所要時間 差 クラス順位
(1)大村・東彼 21時間33分36秒 A-1
(2)長 崎 21時間53分16秒 19分40秒 A-2
(3)佐 世 保 22時間00分53秒 7分37秒 A-3
(4)西彼・西海 22時間04分43秒 3分50秒 A-4
(5)諫 早 22時間06分57秒 2分14秒 B-1
(6)対 馬 22時間12分57秒 6分00秒 B-2
(7)島原半島 22時間18分47秒 5分50秒 B-3
(8)五 島 22時間28分07秒 9分20秒 B-4
(9)北松・松浦 22時間57分55秒 29分48秒 C-1
(10)壱 岐 23時間18分37秒 20分42秒 C-2
(11)平 戸 24時間52分18秒 93分41秒 C-3
※クラスは昨年の成績をもとに区分