海外で懸命に生きた「からゆきさん」知って 戯曲「珈琲とバナナとウィスキー」 島原の内嶋さん自費出版

内嶋さんが出版した「珈琲とバナナとウィスキー」

 明治期の1900年代初頭ごろ、島原半島などから東南アジアに身売りされた女性「からゆきさん」に、長崎県島原出身の作家・故宮崎康平氏が聞き取りをした録音テープがある。元島原市職員、内嶋善之助さん(67)がこれを戯曲「珈琲とバナナとウィスキー」に仕立て、自費出版した。3月に同作の朗読劇を上演する内嶋さんは「創作ではない当時の悲話を、一般の人に知ってもらいたい」と話す。

 からゆきさんは、主に明治から大正にかけ、売られたり人買いにだまされたりして、売春目的で連れ出された。多くが島原半島、熊本県天草地方の貧しい農漁村の出身だったという。
 戯曲の舞台は、1961年7月の宮崎氏の自宅。元からゆきさんの女性=当時(74)=と宮崎夫妻、秘書の計4人のやりとりで展開する。
 女性は03年ごろ、16歳で石炭船の船底に隠され口之津からシンガポールへ。女郎屋での生活や英国人男性との恋愛、稼いだ金で買ったゴム園やホテル経営の成功…。戦争などで国際情勢が刻々と変化した当時、現地での人間関係や生活に悩みながらも懸命に生き抜いた様子が描かれている。
 戯曲は12時間の宮崎氏のインタビューを2時間に凝縮。出来事をありのままに書きつないだという内嶋さんは「からゆきさんが、海外から生きて故郷に帰ってきた事実を伝えたかった」と執筆への思いを語る。
 録音テープは、内嶋さんが宮崎氏の著作を音楽朗読劇として上演したことがきっかけで、宮崎氏の妻、和子さんから委ねられた。内嶋さんは、歴史を語る史料として残したいと、構想から約10年かけ戯曲にした。「日本人が経営する女郎屋の実態や、海外で懸命に生きたからゆきさんの証言が見どころ」と話す。
 戯曲は昨年11月出版。A5判、86ページ。300部発行。島原図書館などに寄贈したほか、希望者には千円(送料込み)で販売する。朗読劇は3月15日午後2時から、島原市城内1丁目の島原文化会館で上演する。入場無料。問い合わせは内嶋さん(電0957.62.2097)。

朗読劇に向け稽古する内嶋さん=島原市内の自宅

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