茂木の料亭跡 宿泊施設化 第2弾 7月開業へ

「月と海」への改装作業が進む「いけす料理旅館 恵美」跡=長崎市茂木町

 長崎市茂木町の料亭跡を使った宿泊施設「NAGASAKI HOUSE ぶらぶら」の大島徹也代表(35)は、近くの別の料亭跡も宿泊施設「月と海」として7月に新装開業する計画だ。両施設を含め今後5年で近隣の空き家や空き店舗を10カ所、宿泊・物販施設に開発する構想も持ち「地域再生のモデルケースにしたい」と意気込んでいる。

 橘湾に面する港町の茂木は海産物やビワの生産で知られ、明治時代には外国人向けの洋風ホテルも建てられた。だが現在は人口減少と高齢化が進み、空き家は増えている。5軒あった料亭のうち、営業を続けているのは2軒だけとなった。
 旅行好きで、地域再生に関心があった南島原市出身の大島さんは、縁あって茂木で活動を始めた。「ぶらぶら」は、「海月 別亭」跡の3階建て延べ約920平方メートルを改装し、2015年に開業した。茂木唯一の宿泊施設で、料金も手頃にしている。年間約7千人の宿泊者のうち、4割は欧米やアジアなどの訪日客だ。
 さらなる観光活性化に向け、「いけす料理旅館 恵美」跡の2階建て延べ約780平方メートルを「月と海」に改装する。国の交付金を含め1億3千万円を投資。1階に40席の飲食コーナーやラウンジ、2階に個室と相部屋を計12室構える。最大60人を収容。相部屋は1人1泊3500円から、個室は5千円からとする予定。
 ぶらぶらと同じ簡易宿所で、受け入れ規模はほぼ同じ。主な宿泊機能は月と海に一本化し、ぶらぶらは多目的施設に変える。地元事業者と連携し、朝食や体験プログラムの充実も図る。
 近隣の空き家を1棟貸しの宿泊施設、空き店舗をカフェや土産店などに再生する構想もある。イタリアの先進事例を参考に「地域まるごとホテル」と銘打ち、「面」で事業を進める。
 ぶらぶらには、宿の仕事を手伝う代わりに、宿泊・食事代を免除する長期滞在者向けのサービスがある。日本周遊の一環で昨年12月からサービスを利用しているフランスのレア・ステファニさん(24)は茂木の印象を「海があり、静か。時の流れがゆっくりしている」と話す。剣道が得意で、地元の子どもたちとの練習も楽しんでいるという。
 大島さんは、まちづくり会社を昨年設立し、食やデザインの専門家と宿泊施設の在り方や事業展開を検討している。「茂木の歴史や文化、自然や食を生かしつつ、長期滞在の外国人の声も生かしたい。地域の人たちと一緒に持続可能な地域づくりを考えたい」と話している。

「海月 別亭」を改装した「NAGASAKI HOUSE ぶらぶら」
「月と海」の完成イメージ模型と大島さん=長崎市、ぶらぶら

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