「けがする前より強い」柔道男子・永瀬 五輪へ着実に前進

「まだまだ日々成長していきたい」と語る永瀬=宮崎県延岡市、旭化成柔道場

 柔道男子81キロ級で2016年リオデジャネイロ五輪銅メダリストの永瀬貴規(旭化成、長崎市出身)が、2大会連続の五輪出場へ着実に前進している。リオ後の右膝の大けがを乗り越えて、昨年は夏から国際舞台で3大会連続優勝。11月のグランドスラム大阪大会も、国内でライバルの1番手だった藤原崇太郎(日体大)に競り勝って頂点に立った。2月の国際大会の結果次第では、本年度中にも五輪切符をつかむ可能性がある26歳に、その手応えや五輪に懸ける思いを聞いた。

 -81キロ級の第一人者という“定位置”へ戻って迎えた五輪イヤー。率直な思いを。
 17年の秋に膝を手術して、そこからなかなか勝てなかったり、納得のいくパフォーマンスが全然できなかったりと悔しさを味わったが、最近ようやく結果が出始めた。東京五輪も近づいてきて「自分が出るんだ、やるんだ」という思いが強くなっている。

 -けがをしていた時期を振り返って。
 手術をするのは初めてで、復帰してちゃんと柔道ができるのかな、自分が思うような動きができるのかな、という不安な気持ちはすごくあった。それでも、腐らずにやってきたからこそ、今の自分がある。成長できている。あのけがも、試合で結果が残せなかった時期も、無駄な時間だったとは思っていない。

 -成長できた部分とは、具体的に。
 けがをした時期に、体を一からつくり直そうと、ウエートトレーニングを今まで以上にやった。試合で負けることで、技術的な反省点も見えた。考える時間も増えて、減量後のリカバリーの方法がうまくいっていないことに気づき、食事の面や試合に対する準備力、考え方もリオ前から変わった。そして、どん底の時期を味わったからこそ、精神面でも成長できた。

 -今の状態は、けがをする前と比べてどれくらい戻ってきたか。
 右膝だけの感覚だったら劣っている部分もあるかもしれないけれど、考え方や精神面など総合力でみると、けがをする前の自分よりも強い自信がある。

 -五輪の金メダルに近づいてきた手応えは。
 その自信もある。でも、現状に満足せずにもっと成長しないといけない。まだ五輪代表も決まったわけではないので。

 -五輪出場が決まったとして。公言している「金」のために、どんなことをやるか。
 技術面だと組み手、技の威力を上げる。精神面も、もっとステップアップしないと。あの舞台(五輪)は相当なプレッシャーがかかる。今思えば、前回のリオはそのプレッシャーにのまれたり、押しつぶされていたなと思う。最後は「俺は誰よりも練習したし、誰よりも強い」と思ってあの舞台に立ちたい。そのために、限られた時間を大切に準備していく。

 -2020年をどんな年にしたいか。
 すべてを柔道に懸けていい、自分の競技人生で一番大切な年になると思う。リオの悔しさを晴らして、五輪王者になるという昔からの夢をかなえる。やり残しなく、自分の満足のいく結果を手にする年にしたい。

【略歴】ながせ・たかのり 長大付小1年時に養心会で柔道を始めた。長大付中から長崎日大高に進み、個人81キロ級で春夏計2度の高校日本一に輝いた。筑波大2年でユニバーシアードを制し、4年の世界選手権で県勢初優勝。翌2016年に旭化成に入社。リオデジャネイロ五輪で銅メダルを手にした。182センチ。26歳。長崎市出身。

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