プログラミング教育 小学校で必修化 論理的思考を育成へ 関心示す児童、教員は不安も

真剣な表情でプログラミングに取り組む児童ら=島原市城内1丁目、第一小

 今年4月から小学校で「プログラミング教育」が必修となる。主に論理的思考と課題解決能力の育成を狙いとするが、学習指導要領では授業時間や内容を詳細に定めておらず、各校で指導計画を立てなければならない。必修化に向けたモデル授業では子どもたちが関心を示す一方、不安を抱えている教員は少なくない。準備に取り組む県内外の小学校を取材した。

 昨年11月、島原市立第一小。教室に入ると、ズラリと並んだパソコンの前に5年生約40人が座り、画面と向き合っていた。「総合的な学習の時間」でプログラミング教材「コードスタジオ」を使う授業。課題は「コンピューターがどんな仕組みで動いているか調べよう」だった。
 画面の左側に迷路のような図があり、「前に進む」「左に曲がる」「(動作を)繰り返す」など「ブロック」と呼ばれる命令を順番通りに組み合わせ、キャラクターをゴールまで導く。児童は図を見て一つ一つ手順を考えながらマウスを動かす。失敗したら教員や友達に教えてもらい、クリアしていった。
 一つクリアすると次の課題に取り掛かる。授業の最後にはそれぞれが気づいたことをワークシートに書き込み、「『繰り返し』を使うとブロックを省略できて便利だった」「難しかったけれど、クリアできてうれしかった」などの意見を発表した。
 同校は県教育センター(大村市)の協力校として、2017年度からモデル授業の作成に取り組んできた。「総合的な学習の時間」を使った年5時間の内容。1年目はセンターの職員が教員役、教員が児童役で研修。2年目からは教員が児童に授業をしている。
 同校のプログラミング教育の指導担当、福嶋康人教諭は「どのクラスの児童も飛び付いて、すぐにできるようになる。大人より覚えるのが早い」と驚く。一方で「普段の生活の中で同じような思考ができるようにするのは難しい」と話す。
 同校は20年度、3~6年生にプログラミング教育を取り入れる予定。福嶋教諭は「実際にパソコンを動かしながら授業をできるのか不安を感じている先生もいる。何をするかは学校の裁量に任されているので、学校ごとに授業内容に差が出てくるのではないか」と懸念する。
 昨年12月、佐賀県武雄市立橘小では「ICTを活用した教育オープンデー」が開かれた。同市は情報通信技術(ICT)教育の先進地で、14年度からすべての小学校でタブレット型パソコンが1人1台配備されている。同校は18年度、文部科学省から全国8校のICT活用推進校に指定された。
 この日は全学年でタブレットなどを活用した授業を実施。5年生のクラスでは、人型ロボット「Pepper」を使って自己紹介をするプログラムを作った。
 児童はタブレット上でプログラミングソフト「ロボブロックス」を使い、あらかじめ紙に書いた設計図通りに命令を組み立てる。普段から朝の始業前にタイピングも練習しており、手慣れた様子でキーボードをたたいていく。できあがると命令をロボットに送信。ロボットの頭や腕などを触ると「私の名前は○○です」「私の好きな果物は○○です」などと話し始めた。思い通りに動かせずプログラミングを修正し、再挑戦する児童の姿もあった。
 担任の前田諭(さとし)教諭は「問題にぶつかった時に、どこがおかしいのか、どうしたら良いのか自分たちで主体的に考え、解決するようになってきている」と、プログラミング教育の効果を説明した。

人型ロボット「Pepper」を使って自己紹介をするプログラミングに挑戦する児童ら=佐賀県武雄市、橘小

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