長崎 この1年(3)佐世保で銃問題相次ぐ 問われる米軍の管理体制

米海軍佐世保基地の指示で日本人警備員が銃を携行して歩いた現場の市道=佐世保市立神町(写真は一部加工)

 5月9日の夜、佐世保市中心部にある外国人バーに、米海軍佐世保基地に配備されていた強襲揚陸艦ワスプの男性水兵=当時(21)=が、友人と来店した。接客した女性スタッフは水兵とカードゲームで遊んだが、落ち着かない様子に違和感を覚えた。午後10時半ごろ、水兵は友人を残したまま1人で店を出た。
 女性は翌日、水兵が店を出た後に近くの佐世保公園(平瀬町)で死亡したことを知った。拳銃で自殺したとみられる。店を出て約1時間半後のことだった。女性は「銃を持ち込んでいた可能性もある。そう考えると怖い」と振り返った。
 基地によると、水兵は銃の修理や運用をする担当で、武器庫に出入りできた。拳銃を許可なく持ち出したとみられる。基地は「武器保管や貸与の手順などに不備は確認されていない。ワスプでの武器管理手順は米海軍共通の要件以上だった」としている。
 銃をめぐる問題は続いた。この事件の発生から約1週間後、基地に勤務する日本人警備員が基地の指示で拳銃を携行したまま、基地外の市道を歩く事案が発覚した。
 全駐留軍労働組合(全駐労)長崎地区本部によると、指示を受けた警備員は「日米地位協定違反だけでなく、銃刀法違反に当たる可能性もある」として猛反対したが、基地は従うよう強制。事態を知った防衛省も事前に基地に中止要請を出したが、無視された。1週間程度、警備員に強制していた可能性がある。全駐労長崎地区本部の渡邊秀與(ひでよ)書記長は「米軍は日本の法令を軽視している」と憤る。
 佐世保署などは12月20日、自殺した水兵を銃刀法違反などの疑いで、容疑者死亡のまま書類送検した。朝長則男市長は23日の定例会見で「(米軍は)管理体制が不十分だと思っている。どのように銃が持ち出されたのか解明してほしい」と述べた。
 日本人警備員の銃携行の問題では、佐世保市は6月に九州防衛局から「米軍内で運用の誤解があり、問題は是正された」と説明を受けたという。
 いずれの問題についても米軍は具体的な再発防止策を示していない。発生した事実を真摯(しんし)に受け止めているのか、その姿勢が問われている。

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