長崎 この1年(1) ローマ教皇来崎 核廃絶へ被爆者励ます

原爆落下中心地碑(右)に献花し、核廃絶のメッセージを読み上げるローマ教皇フランシスコ(中央)=11月24日、長崎市の爆心地公園

 11月24日、雨が降りしきる長崎市松山町の爆心地公園。ローマ教皇フランシスコ(83)は原爆落下中心地碑の献花台に供えた花輪に両手を添え、じっと目を閉じた。しばらく碑を見詰めた後、再び目を閉じ、手を組んだ。時が止まったかのような約1分半の深い祈り。その後、ゆっくりと、決然とした口調で核兵器廃絶のメッセージを世界へ発信した。
 ローマ・カトリック教会の頂点に立ち、世界的な影響力を持つ教皇が、1981年2月の故ヨハネ・パウロ2世以来、2度目の来崎を果たした。教皇は11月23日から26日にかけて、長崎のほかに東京や広島も訪ねた。
 教皇は2013年の就任以降、核廃絶を訴えてきた。爆心地公園では、原爆投下後の長崎で撮ったとされる「焼き場に立つ少年」の写真パネルを傍らに置いた。「核兵器のない世界は可能」と被爆地を鼓舞し、軍拡競争を「テロ行為」と強く非難した。真の平和には相互尊重や連帯が必要として、世界の政治指導者や市民に行動を促した。
 メッセージは、高齢を押して平和運動を続ける被爆者や次世代を担う若者たちに大きな感銘を与えた。
 長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(79)は「励みになった」と振り返り「被爆地の責任を果たさなければ」と決意を新たにした。教皇来崎を機に、核廃絶を訴える署名活動への市民の反応も良くなってきたという。「爆心地の教皇」を積極的に語り継ぐことが被爆地長崎の官民に求められている。
 長崎では爆心地公園に続き、日本二十六聖人殉教地(西坂公園)で祈りをささげ、県営ビッグNスタジアムでミサを執り行い、多くの人と交流した。
 教皇が「古い友人」と呼ぶ日本二十六聖人記念館の前館長で修道士アントニオ・ガルシアさん(90)は西坂公園で再会した時、「悪い草はなかなか死なない」とユーモアたっぷりの言葉を掛けられた。
 「私の元気な姿を草にたとえて喜んでくれた」というガルシアさん。一方で「戦争がなくならないことへの嘆きの言葉でもあった」と考えている。

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