玄海・原子力防災訓練 住民参加、不安も 「当事者意識の向上」求める声

巡視艇で避難訓練をする住民(中央)ら=平戸市、薄香漁港

 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の事故を想定した30日の原子力防災訓練。長崎県内では同原発30キロ圏内の県北4市の住民が参加した。避難を促す緊急速報メールが導入されるなど新たな試みがあった一方で、参加住民からは原発事故や避難所生活への不安、防災意識向上を求める声も聞かれた。
 「地震の影響により事故が発生しており、緊急事態となりました」-。市民への避難や屋内退避の指示の手段として、松浦市は緊急速報メールを導入。2回に分けて鷹島、黒島、星鹿、志佐各地区には避難指示を、その他の地区には屋内退避を求めるメールを一斉送信した。
 混乱はなかったが、佐賀県伊万里市など近隣のメールが松浦市民に届くケースも。市防災課は「地域的に電波が重複する地域があるのは仕方がない。混乱を招かないよう、今後も周知を徹底していく」とした。
 同原発30キロ圏内にある佐世保市立吉井中からは、生徒9人と教頭が松浦鉄道(MR)とタクシーを乗り継いで、圏外の三川内地区公民館に避難した。2年の前岳伸孝君(14)は「事故を想像すると、移動は長く感じた」と不安そうだった。同公民館に避難してきた同市江迎町の会社員で、地区の区長の増本明さん(66)は「住民に参加を呼び掛けるが、集まらない。幅広い人たちに危機感を持ってほしい」と、当事者意識の向上を求めた。
 平戸市の薄香漁港では、船での避難訓練に参加した大久保地区と離島の大島、度島両地区の計18人が、海上保安部の巡視艇や民間のチャーター船で上陸。マイクロバスで市立平戸中体育館に向かった。大島村の漁協職員、山口英雄さん(50)は「小さな船は揺れるので、高齢者は乗り降りも大変。私も知らない土地での避難生活は心配」と話した。
 島南部が30キロ圏内に入る壱岐市では、40人が航空自衛隊の大型ヘリコプターや定期船で福岡県中間市に避難した。

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