ローマ教皇 核廃絶「可能」 長崎から行動訴え

核兵器廃絶を訴えるローマ教皇フランシスコ=24日午前10時28分、長崎市松山町の爆心地公園

 ローマ・カトリック教会の頂点に立つ教皇(法王)フランシスコ(82)は24日、長崎市を訪れた。松山町の爆心地公園で「核兵器のない世界は可能であり必要だと確信している」と演説し、世界各国の政治指導者に行動を促した。軍拡競争は「貴重な資源の無駄遣い」であり「途方もないテロ行為だ」と強く非難した。
 教皇の来崎は1981年2月の故ヨハネ・パウロ2世以来2度目。
 教皇は爆心地公園の原爆落下中心地碑に献花し、バチカンから持参したろうそくに点火、黙とうをささげた。強い雨の中、被爆者や信者、子どもら約900人が集まり見守った。
 教皇は演説で、長崎について「核兵器が人道的にも環境にも悲劇的な結末をもたらすことの証人である町だ」と指摘。米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効し、来春の核拡散防止条約(NPT)再検討会議を前に核保有国と非保有国の溝が深まる中で「相互不信によって兵器使用を制限する国際的な枠組みが崩壊する危険がある」と警鐘を鳴らした。
 核兵器の存在が戦争抑止につながるという考え方を否定し「核の理論によって促される恐れ、不信、敵意の増幅を止めないといけない」と呼び掛けた。核保有国や非保有国だけでなく宗教団体や市民社会、国際機関にも、核兵器廃絶に向けて「一致団結しなければならない」と求めた。
 核兵器廃絶について、核保有国と日本が批准していない核兵器禁止条約を含めて「核軍縮と不拡散に関する国際的な法的原則にのっとり、飽くことなく、迅速に行動する」と強い決意を示した。
 教皇はこの後、安土桃山時代に豊臣秀吉の命で処刑された「日本二十六聖人」の殉教地(西坂公園)を訪問。約3万人が集まった県営ビッグNスタジアム(松山町)でミサを執り行った。
 午後には広島に移動。平和記念公園の集いでは、戦争のための原子力利用は「犯罪以外の何ものでもなく倫理に反する」と強調。原爆と核実験、あらゆる紛争の犠牲者の名により「戦争はもういらない」と叫ぶよう呼び掛けた。

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