ローマ教皇 平和実現、ミサで呼び掛け

約3万人の信者らが参列した教皇フランシスコによるミサ=24日午後2時17分、長崎市の県営ビッグNスタジアム

 午前中の強い雨がうそのように、まばゆい日差しがミサ会場の県営ビッグNスタジアム(長崎市松山町)に降り注いだ。説教した教皇フランシスコは、さまざまな分断が広がる世界に向け「愛こそが、あらゆる憎しみ、利己心、嘲笑、言い逃れを打ち破る」とメッセージを送った。会場を埋めた約3万人の信者らは「ビバ、パパ(教皇万歳)」と叫び、興奮の渦が巻き起こった。
 教皇は午後1時半ごろ、専用オープンカーで登場し、笑顔で手を振って場内を回った。参列者は日本やバチカン、アルゼンチンの国旗を振って歓迎。教皇が赤ちゃんを抱き上げて口づけすると、割れんばかりの歓声が上がった。
 教皇は祭壇に安置された被爆マリア像に一礼。スペイン語での説教では「長崎はその魂に癒やしがたい傷を負っている」と被爆地の痛みに思いを寄せた。「戦争によって踏みにじられた犠牲者たちは、さまざまな場所で起きている第3次世界大戦によって今日もなお苦しんでいる」と指摘。平和な世界を実現するために「私たちも声を上げよう」と呼び掛けた。
 安土桃山時代にローマを訪問して教皇に会った天正遣欧使節の一人、中浦ジュリアンの縁者で獣医学博士の小佐々学さん(79)=さいたま市=は、ジュリアンの肖像画を持って参列。「教皇は車から身を乗り出して肖像画を見てくれた」と胸を張った。
 1981年に教皇として初めて来日した故ヨハネ・パウロ2世の長崎歓迎集会にも参列したという長崎市家野町の森内照子さん(89)は「核廃絶や平和を願い、互いの絆をつくろうというメッセージを感じた。これからの道しるべになると思う」と教皇再訪に力を得た様子だった。
 長崎市下黒崎町のかくれキリシタンの帳方(指導者)、村上茂則さん(70)は「禁教期に信仰を守り続けた先祖が一番喜んでいるだろう」と感無量の表情。晴れ渡った空を見上げ「日本や世界の今後を示しているようだ。きっと未来は明るいと思う」と笑顔を見せた。

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