「全員無事でよかった」 佐世保市消防団員 高齢者の避難に尽力 8月の江迎川氾濫  冠水の中、ホーム入所者移動

高齢者の避難支援に尽力した(左から)吉居さん、志水さん、末永さん=佐世保市江迎町

 8月27日午前、1時間に100ミリを超える猛烈な雨が佐世保市江迎町を襲い、町を流れる江迎川は氾濫した。濁った水があふれ出し、道路は冠水。住宅にも水が押し寄せる中、高齢者が入所するグループホームの避難支援に3人の市消防団員が当たった。第6中隊52分団の志水智和さん(47)、吉居弘さん(47)、末永幸仁さん(40)。分団長の志水さんは「とにかく必死だった。全員無事でよかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべる。
 3人はその日、数日前に開かれた千灯籠まつりの撤収作業のため、分団の詰め所近くの公民館に集まっていた。しかし大雨で作業が始められず、待機していた。
 午前10時すぎ。志水さんは市消防団本部の知り合いに、冠水する可能性がある道路に車が入らないよう、交通誘導をしてほしいと頼まれた。志水さんと末永さんは消防車で現場に向かい、吉居さんは連絡担当として詰め所に待機した。
 交通誘導を始めて10分ほどたったころ。川沿いにあるグループホームの職員から「入所者を避難させたいが、どうしたらいいか」と相談を受けた。県県北振興局河川課によると、江迎町では午前10時半からの1時間に117ミリの雨量を観測していた。
 ホームには、79歳から100歳の男女18人が入所していた。消防車に一度に乗せられるのは5人程度。市が開設した避難所に全員を移動させるのは時間がかかる-。志水さんたちは考えた末、近くの市営住宅の集会場に避難させることに決めた。
 消防車で3往復して14人を移動させたころには、車を動かせないほど冠水していた。残り4人は抱きかかえて、川から少し離れた場所にある整骨院に運んだ。全員の避難が終わったとき、水位は腰のあたりまで上がっていた。
 消防団員歴20年の志水さんにとって、避難の支援は初めての経験だった。「後から思えば、応援を呼ぶべきだった」と反省もした。それでも入所者から「助かりました」「ありがとう」とお礼の言葉をもらい「やってよかった」と思う。
 避難場所を提供してくれた市営住宅や整骨院の関係者も、グループホームの職員も、志水さんの知り合いだった。「普段から付き合いがあったおかげで、素早い判断ができた。これからも地域に根差した活動をしたい」。
 そして、若い世代へのメッセージとして、こう続けた。「消防団は人手不足が続いている。自分たちの町を自分たちで守るために、協力してくれる人が増えたら、うれしい」。

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