20日告示・大村市長選 直前情勢 20年ぶり無投票の公算 「選択肢ほしい」の声も

市長選の告示が20日に迫った大村市。現職以外、目立った動きはなく無風状態となっている=大村市役所

 任期満了に伴う大村市長選の告示が20日に迫った。今のところ、再選を狙う現職の園田裕史氏(42)=無所属=以外に目立った動きはなく、1998年以来、約20年ぶりに無投票になる公算が大きい。有権者からは「選択肢がほしい」との声も聞こえる。
 「(前回市長選で掲げた)マニフェスト(公約集)のうち9割は進めることができた」。8月下旬、市内であった園田氏の事務所開き。集まった後援会関係者約20人を前に園田氏はこう力を込め、「残り1割のできなかったことに再挑戦し、オール大村のまちづくりを進めたい」と意欲をみなぎらせた。
 同市は過去、市長選などのたびに激戦が繰り広げられてきた。元市議の園田氏は4人が立候補し混戦となった2014年の市長選で、当時の現職、松本崇氏に敗れ落選。松本氏の急逝に伴う翌15年の市長選では松本氏の長男で現県議の松本洋介氏との一騎打ちを制し初当選した経緯がある。そうした“政争の町”とも揶揄(やゆ)される大村で、今回の市長選は一転、無風状態だ。
 前回、園田氏の支持に回った同市区選出の小林克敏県議は「1期目を評価する市民の声も多く、『絶対に変えなければ』という状況にない」と、ほかに立候補者が出ない背景を解説する。松本県議は所属する自民党で対抗馬の擁立を模索していたが、候補者が見つからず断念。「園田市政への批判の声もあるが、今回は見守る」と静観する構えだ。
 地方が人口減に直面する中、同市は珍しい人口増加都市だ。現在は約9万5千人と、この4年間で約2300人増えた。大村ボートも18年度、大村開催の売上額が1952年の開設以来最高となる728億円を達成。県立・市立一体型図書館「ミライon図書館」の完成など、町の姿も大きく変わりつつある。
 「いろんな形で種まきをしたことが数字として現れてきている」と手応えを口にし、「情報発信には徹底的にこだわり、町の雰囲気を変えることに注力してきた」と4年間を振り返る園田氏。ただ、その評価はさまざまだ。「しがらみを嫌い、中立的な立場を重視している印象。いろんな所に足を運び、自分の言葉で話している」。そう好意的に受け止める市議もいる一方で、別の市議は「自分が瞬間的に目立つことをやっているように見える。1期目は松本市長時代の延長線上のことが多かった」と厳しい目を向ける。
 18歳選挙権が適用されて初めて、そして令和初となる同市長選。園田陣営関係者は「選挙戦になることを想定し、準備はしっかり進める」と気を引き締めるが、新幹線を生かしたまちづくり、市庁舎建て替え、待機児童の解消などの課題を抱える中、政策論争抜きに古里のかじ取り役が決まる可能性が高まっていることに、有権者からは残念がる声も。市中部の60代自営業男性は「会社組織でも議論を戦わせるのは大事なこと。今の市政に意見を言う人が出てこないのは少し寂しい」とつぶやいた。

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