9月19日は「九十九島の日」 景観以外の魅力もアピール

「九十九島の日の制定をきっかけに、景観以外の魅力を知ることができた」と語る蓮田さん=佐世保市役所

 佐世保市が9月19日を「九十九島の日」と定めてから、今年で20年を迎えた。制定に携わった蓮田尚さん(60)=元市市民生活部長=は「九十九島は景観の美しさしか知られていなかった。制定をきっかけに調査が進み、それ以外の魅力を知ることができた」と振り返る。
 九十九島などは1955年、西海国立公園に指定された。それ以降、市は観光客の誘致に向けてPR活動を強化。しかし、展望台や遊覧船から景観を眺めるだけの“通過型”観光地というイメージが強く、宿泊客が少ない状態が続いた。
 88年にはハウステンボス開業計画が持ち上がった。波及効果に期待し、市は九十九島を望む鹿子前地区に水族館やホールなどを整備する事業を始めた。90年に投資や運営を担う会社として第三セクター「させぼパール・シー」を設立。94年7月に西海パールシーリゾート(現九十九島パールシーリゾート)の供用を始めた。
 しかし、会議やイベントを思うように誘致できず、集客は伸び悩んだ。この状況を打開しようと、97年に市が本格的に運営に参加。当時、市観光課職員だった蓮田さんは、西海パールシーセンター(現九十九島水族館)のセンター次長に就任した。
 巻き返しに向けて協議を重ねる中で、99年を「百年に一度の九十九島の年」、9月19日を「九十九島の日」と定め、キャンペーン活動に取り組むことになった。景観以外の魅力も伝えようと、7月20日から2カ月間は「九十九島の自然と魚たち展」を開き、島に生息する動植物を紹介した。
 企画展を準備する中で、九十九島の調査不足を痛感した。「まだまだ知らないことだらけ。調べたら面白いはず」。珍しい生物や夕日の沈む時間、島の数などを徹底的に調査。2000年には、当時熊本県にしか植生していないとされていた希少植物のトビカズラを九十九島のトコイ島で発見した。02年には市観光課に設けられた九十九島係の初代係長に。今年3月に退職した。
 昨年4月、九十九島は非政府組織(NGO)「世界で最も美しい湾クラブ」(本部・フランス)に加盟認定された。「市民により誇りに思ってもらえる」。そう喜ぶ一方で、気掛かりなこともある。「美しいということだけに、また戻ってしまうのではないか。それ以外の魅力にも目を向ける必要がある」。節目の記念日に、そんな思いを強くしている。

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