「被爆者の悲しみ想像して」 大石さん写真展 開幕 あす講演、16日 記念対談も

大石さんが撮影した被爆者らの写真に見入る来場者=長崎新聞文化ホール・アストピア

 写真家、大石芳野さん(東京)の長崎新聞創刊130周年記念展「長崎の痕(きずあと)-それでも、ほほ笑みを湛(たた)えて、生きる。」(協力・キヤノンマーケティングジャパン)が5日、長崎市茂里町の長崎新聞文化ホール・アストピアで開幕した。大石さんは「被爆者が74年間抱えてきた悲しみや苦しみを想像しながら、写真と向き合ってほしい」と話している。無料。17日まで。

 大石さんは戦争の傷に苦しむ人々の姿を約40年にわたり国内外で撮影。1997年から被爆地長崎を取材し、約130人の肖像を中心にモノクローム221点を収載した写真集「長崎の痕」(藤原書店)を3月出版した。同展は大石さんが選んだ71点を説明文も添えて展示。開催は7月の東京、大阪に続き3カ所目。

 開幕と同時に訪れた長崎市石神町の大学1年、大下田海都さん(19)は、5月に亡くなった被爆者の池田早苗さんが長女、佐藤直子さんと笑顔で写った1点を前に、「心に74年前の苦しみがある中で、笑顔で発信している姿が印象的」と語った。

 会場では被写体となった被爆者らでつくる「写真集『長崎の痕』を広める会」が、同書を県内の学校に贈るための寄付を募っている。被爆者で同会の城臺美彌子(じょうだいみやこ)さん(80)は「亡くなった人の写真の前では涙が出た。多くの若い人に見てもらい、原爆や核兵器の問題を身近に考えてほしい」と訴えた。

 開場時間は午前10時~午後6時(17日は午後5時まで)。会場で「長崎の痕」を4千円(定価4536円)で販売。7日午後1時から会場で、大石さんが「長崎の痕を撮り続けて」と題し講演。16日午後3時から同2階ホールで、大石さんのトークと、長崎市の田上富久市長、東京都武蔵野市の松下玲子市長の記念対談がある。いずれも無料。

 問い合わせは長崎新聞社(電095.844.2111)。

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