ながさき8.9平和展 11日まで長崎県美術館 「原爆 二度とあってはならない」 被爆後の様子など200点

原爆投下後の様子を表現した立体作品を見つめる岡田さん(左)と大下田さん=長崎市、県美術館

 戦争、原爆、平和をテーマにした美術展「第40回ながさき8.9平和展」(同企画委員会主催)が、長崎市出島町の長崎県美術館で開かれている。自由な表現で制作された油彩、水彩、写真、立体、児童画など計200点(うち海外から27点)が並ぶ。11日まで。
 同展は、長崎に原爆が投下された8月9日を原点とする美術界の平和運動として1980年に始まり、毎年開催。応募全作を無審査で展示するアンデパンダン形式をとっている。
 原爆投下直後の長崎市中心部の被害状況を、廃品となった電化製品の部品などを使って表現した立体作品「1945 跡」を制作したのは被爆者の岡田仁さん(77)=長崎市西海町=。3歳の時に同市鳴滝町(当時)で被爆。後日に見た焼け野原の記憶と、被爆地で多くの死者を焼く作業に関わった叔父から聞いた状況を、縦92センチ、横180センチのベニヤ板上で表現した。
 配線で表した浦上川の周りに死者や被爆者に見立てたコンデンサーをちりばめ、岩屋山の方角に向く叔父に見立てた釈迦(しゃか)像も配置。釈迦像の背中には叔父が当時を詠んだ短歌「くれなずむ岩屋かそけしこの夕辺汝幾万の人の死を見し」をつづった。
 岡田さんは「被爆の悲惨さを伝えるため、そして3年前に亡くなった叔父をしのぶために制作した。作品で戦争や原爆投下が二度とあってはならないというメッセージを届けたい」と語った。作品に見入っていた同市石神町の大学生、大下田海都さん(19)は「不要となった部品で表現したことで地獄のような状況が伝わってきた。美術作品で被爆の実相を伝えることも大切だと感じた」と話した。
 企画委員会事務局長の松尾英夫さん(78)は「平和な世界を希望する思いがこもった作品が集まっているので、多くの人に見てもらいたい」と呼び掛けた。
 入場無料。9日午前10時半から長崎原爆投下時刻の同11時2分まで、会場で同市の美術家、内藤修子さんによるパフォーマンスがある。最終日の11日午後3時、平和ミニコンサートも予定している。

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