長崎平和宣言骨子 核禁条約批准 改めて訴え 広島との相乗効果期待

長崎平和宣言の骨子を説明する田上市長=長崎市役所

 長崎市の田上富久市長は29日、8月9日の原爆の日の平和祈念式典で読み上げる長崎平和宣言の骨子を発表した。日本政府に改めて核兵器禁止条約への署名、批准を訴える。今年は広島市の松井一実市長も6日に読み上げる平和宣言で政府に同条約への署名、批准を新たに求める方針で、両被爆地が足並みをそろえる。
 2017年に国連で採択された同条約は規定の批准国数に達しておらず、未発効。市役所で会見した田上市長は条約が「世界の規範になるべきだ」と指摘した。日本政府に対し「唯一の戦争被爆国として一刻も早く署名、批准の方針を示してほしい」と述べ、広島市の要請との相乗効果を期待した。
 政府には「北東アジア非核兵器地帯」創設の検討や、被爆者援護の充実、国が指定する地域の外で原爆に遭った「被爆体験者」の救済も求める。憲法9条の改正問題について田上市長は「国民的な議論の中で方向性が決まる」と従来の考えを変えず、宣言では改憲の是非に触れず平和理念の堅持を求める。
 宣言では被爆者の原爆詩を初めて取り上げ、被爆の惨状と被爆者の思いを紹介する。米国とロシアの対立など核を巡る世界情勢への危機感を表明し、各国首脳に被爆地訪問を呼び掛ける。核保有国には核拡散防止条約(NPT)が課す核軍縮義務の履行を要請。「核なき世界」の実現へ市民社会が果たす役割の大きさも訴える。
 長崎平和宣言は、被爆者や識者ら15人の起草委員会が5月から計3回の会合を重ね、内容を検討した。9日に田上市長が読み上げ、英語や中国語など10カ国語の翻訳版も公表、世界へ発信する。

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