ハンディ超え一つに 諫早・希望が丘高等特支和太鼓部 さが総文開幕まで1週間「最高の演奏披露したい」

さが総文の本番に向け練習に熱が入る希望太鼓連=諫早市、県立希望が丘高等特別支援学校

 佐賀県で27日開幕する高校生の文化活動の祭典「第43回全国高校総合文化祭」(2019さが総文)まで1週間。長崎県からは21部門に約350人が参加する。このうち郷土芸能部門には、県立希望が丘高等特別支援学校(諫早市多良見町)の和太鼓部「希望太鼓連」が、2010年以来9年ぶりに3回目の出場を果たす。悔いのない演技、演奏を目指し、部員たちは練習を重ねている。
 「せいっ」「さっ」-。同支援学校のプレイルームに威勢のいい掛け声と力強い演奏が響く。顧問の笠村節子教諭(37)は、部員22人に大きな声で呼び掛けた。「団結力。思いやりを持って取り組もう」
 昨年11月の県高総文祭郷土芸能部門は、高校など9校10団体が出場。希望太鼓連はオリジナル曲「神火天翔(しんかてんしょう)」で金賞に輝き、さが総文への出場権を得た。部長の山口拳太郎さん(18)=3年生=は「練習の成果を発揮できた」と振り返る。
 部員たちは軽度の知的障害があり、コミュニケーションがうまく取れなかったり協調性が低かったりする。1人のちょっとしたミスでけんかになることも。そのたびに笠村教諭は「思いやりを持って」と諭す。
 全国高総文祭は「文化部のインターハイ」とも呼ばれ、文化系生徒の憧れの舞台。支援学校の生徒が県予選で好成績を収めて出場するのは困難を伴う。しかも希望太鼓連の練習時間は周辺住民らへの配慮などから、平日朝の20分と放課後の1時間、土曜日は2時間と限定的。太鼓は18個しかなく、2、3個は一部破損しているが本番ではそのまま使わなければならない。
 それでも今回、出場権を勝ち取れたのは部員が太鼓を大好きだから。忘れっぽいところもあるが、教諭らから指示やアドバイスを受ければ素直に聞き、熱心に練習する。「何事にも一生懸命」と笠村教諭は目を細める。
 今月13~15日に同支援校であった合宿。駆けつけたOBの川内英次さん(19)は部員を激励した。「和太鼓演奏にハンディは関係ない。みんな同じ高校生。強い気持ちがあればいい演奏ができる。全国で賞を取ろう」。部員の表情が引き締まった。
 さが総文でも「神火天翔」を披露する。他の出場校は笛や鳴り物なども入れて演奏するが、希望太鼓連は太鼓と竹だけの楽器構成。和太鼓の基本的奏法をシンプルに生かすが、一つにまとまらなければ楽曲は台無しになってしまう。
 山口さんは「みんながしっかり声を出し合えば一つになれる。僕たちは長崎県の代表。自分たちの限界を超えた最高の演奏を披露したい」と決意を語った。
 30日夕、佐賀県の武雄市文化会館に22人の思いがこもった太鼓が8分間、鳴り響く。

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