代々受け継ぐ「川まつり」 五島・片山地区 田畑潤す水神様に感謝

世間話をしながらわらを編み、「つと」を作る住民=五島市上大津町

 長崎県五島市上大津町片山地区の住民が、田畑を潤す水神様などを祭る「川まつり」を代々受け継いでいる。かつては島内各地で開かれたが、生活様式や住環境の変化のため開催する集落は今ではわずか。25日は同地区の町内会メンバーが、先人から伝わる昔ながらの方法で米と甘酒を供え、水への感謝の念を新たにした。
 総代の片山千喜(せんき)さん(64)によると半世紀ほど前、同地区を流れる鉄砲洲(てっぽうず)川は豊富な湧き水をたたえ、一帯に水田が広がっていた。湧き水は農業用水のほか、食事や洗濯などにも活用。川まつりが始まった時期や由来は詳しく分からないが、こうした水の恵みに感謝する行事として始まったとみられる。
 しかし同地区は住宅地として再開発される中で、川がコンクリートで固められて狭まり、湧き出す水量も減っていった。それでも住民らは年配者から作法を引き継ぎ、年3回(旧暦1、5、9月の23日)の川まつりを続けてきた。同地区では、稲わらを束ねて編んだ「つと」に炊いた米を、竹筒に甘酒を入れ、ササにぶら下げて供える伝統がある。
 今月25日は町内会の60~70代8人が参加し、朝から山でササを切り出したり「つと」に米を入れたりして準備。計6本のササを、水神様を祭るほこらや水が湧き出る場所など鉄砲洲川の周辺5カ所に奉納した。最後は地区のお堂に集まり、恒例の酒盛りを楽しんだ。片山さんは「今では湧き水が少なく田んぼもないが、先輩から受け継いだ行事なので続けたい。それに、地域の仲間と集まり、酒を飲みながら情報交換するのも毎回の楽しみ」と笑顔で語った。

米の入った「つと」と、甘酒を注いだ竹筒をササにぶら下げ、水神様のほこら近くの石垣に差し込む住民=五島市上大津町

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