佐世保と安全保障 基地と経済(下)波及効果 雇用、消費に貢献

自衛隊と「共存」する佐世保市は、経済との結び付きも強い=佐世保市内

 桜の花びらがひらひらと舞い散る4月9日。海上自衛隊佐世保教育隊(長崎県佐世保市崎辺町)の入隊式。真新しい制服に身を包んだ294人の中で、3列に規則正しく並んだ女性隊員47人が、ひときわ目を引いた。

 これまで教育隊の女性受け入れは、横須賀だけだったが、地元に近いほうが増えると見込み、本年度から佐世保と舞鶴でも始まった。8月下旬に全国の部隊に配置されるまでの約4カ月半にわたり、隊員は佐世保で生活する。

 佐世保市によると、市内には昨年4月現在、海上自衛隊員約5千人、陸上自衛隊員約2100人がいる。これに加え米海軍や家族らは約6500人、米海軍基地の日本人従業員は約1700人いる。

 佐世保市内の隊員の人件費や資材、食料品などの購入、艦船などの修理に充てられる「自衛隊支出高」。その額は2017年度で710億7千万円に上る。佐世保市基地政策局は「経済波及効果を追うのは難しいが、一定の貢献はあると考える」。人口流出が深刻な地方の消費を支えている。

 一部を試算した数字がある。佐世保商工会議所は17年3月、陸自水陸機動団新編に伴う、経済波及効果の調査を公表した。機動団の隊員2千人で試算した場合、家族を含め、水道光熱費や交通費、生活費などで年間43億3千万円程度の消費需要があると見積もった。
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 自衛隊は“雇用の受け皿”にもなっている。長崎県を本籍とする自衛隊員は9730人(2017年10月末現在)。全国で5番目に多い。自衛隊員の娘を持つ、長崎県内の40代女性は「県民の自衛隊への理解もあり、県内の企業に比べると給料が高いイメージがあった」と入隊を勧めた。

 佐世保で一般的に通じる“基地経済”という言葉。佐世保防衛経済クラブの馬郡謙一会長は「景気が回復したと言われるが、決して地方はよくない。それでも佐世保が“底”までいかないのは基地があるからだ」と強調する。その上で「基地増強という言葉に抵抗感を持つ人はいるが、佐世保は安全保障の先端地にならざるを得ない。市民にも基地依存の認識はあるはずだ」。

 一方で佐世保地区労の樫本洋議長は「施設や隊員数など最近の基地増強の傾向をみると、専守防衛から逸脱しているように感じる。観光などほかの産業にもっと力を注ぐべきではないか」と疑問を投げ掛ける。

佐世保の自衛隊支出高の推移

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