佐世保と安全保障 基地と経済(上)“軍事産業” 地域の貴重な「支え」に

崎辺分屯地開設までの事業費約100億円のうち、17億6千万円を地元業者が受注した=佐世保市崎辺町

 海上自衛隊と陸上自衛隊がある長崎県佐世保市。地元企業は関連施設の整備や物品調達などハード、ソフト両面で受注をしている。とともに、多くの隊員はここで「生活」をしている。人口流出など地方の衰退が指摘される中、地域経済における自衛隊の存在感は増している。現状を考えた。

 青空が突き抜けるように広がった3月26日。佐世保市崎辺町に陸上自衛隊の新たな拠点が開設した。離島防衛を担う水陸機動団の隷下部隊、戦闘上陸大隊などが置かれる「崎辺分屯地」だ。

 約13.4ヘクタールを誇る敷地には隊庁舎や体育館、水陸両用車の陸上訓練場、整備場が備えられている。九州防衛局によると、開設までの事業費は約100億円。うち17億6千万円(下請けを除く)を佐世保市内の業者が受注した。

 昨年3月に発足した機動団の関連工事を中心に、佐世保の防衛関連工事は近年増加傾向にあった。佐世保市などによると、九州防衛局発注工事は2016年度、前年度の3倍超となる約126億9400万円に上った。17年度は工事が落ち着き、大きく減らしたが、それでも47億3200万円ある。

 発注額に占める地元企業の受注率は、2013年度は11.6%にとどまっていた。しかしその後上昇し▽14年度57.4%▽15年度40.9%▽16年度48.8%▽17年度50.3%-と高水準を維持している。

 長崎県建設業協会佐世保支部の崎田誠伸支部長は「地元にできるものは地元に、と防衛省に陳情を重ねてきた。それが近年実ってきた」と分析。「一般の公共工事が厳しい中、防衛工事は貴重な『支え』になっている」と語る。
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 “軍事産業”は建設業界に限らない。海上自衛隊佐世保地方総監部は2014年10月から、入札制度「オープンカウンター方式」を導入。物資の調達などで地場企業の参入を促している。予定価格が160万円以下の物品、100万円以下の船の補修などの役務について、取引先を公募している。

 契約実績は初年度の14年度が約1億2600万円。以降は毎年4億円以上を契約。17年度は約4億5200万円のうち、長崎県内企業が89.8%に当たる4億500万円を占めた。

 加藤裕一契約課長は「制度は定着してきた。商工会議所と連携し、さらに地元事業者への周知を図り、参入拡大につなげたい」と気を吐く。


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