あすからNPT準備委 長大レクナ副センター長・広瀬訓氏が展望語る 米の姿勢が焦点

第3回準備委員会の見通しを語る広瀬副センター長=長崎市文教町、レクナ

 2020年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた第3回準備委員会が29日から米ニューヨークの国連本部で始まる。会議を傍聴する長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の広瀬訓(さとし)副センター長に展望を聞いた。

 -準備委の焦点は。

 アメリカがどんな姿勢を示すかだ。トランプ大統領は、核軍縮は中国、ロシアと話すことであり、各国代表がニューヨークに集まり議論すべきものではないと考えていると思う。アメリカが後ろ向きになれば、ほかの国もしらけてしまう。

 -核兵器禁止条約はどう扱われているのか。

 核保有国は、NPTとは違う条約なので議論する必要がないと考えている。一方、核禁条約の推進派も条約により国際社会の分断が深まり、NPTの再検討プロセスが動かなくなったと批判されるのは避けたい。暗黙の了解であまり触れられないようになっている。

 -10年の再検討会議では核軍縮の強化策を盛り込んだ最終文書を全会一致で採択したが、15年は保有国と非保有国が対立し決裂した。20年の見通しは。

 一つはアメリカがやる気を見せず、少しでも批判されれば最終文書に反対して終わるパターン。もう一つは、アメリカが孤立は望ましくないとして適当に妥協し採択するパターン。あまり成果は期待できない。

 -核軍縮は進むのか。

 恐らく核の非人道性や、核抑止は有効か否かといった一般論で議論しても状況は動かない。「差し当たり問題はなく、いじる必要もない」という発想だ。現状を大きく変える必要があり、北朝鮮の非核化が実現すれば、その一つとなる。核の放棄による安全保障が議論しやすくなるからだ。

 -核軍縮を巡る日本政府の態度をどうみているか。

 ポーズは見せるが、下手に動くと摩擦が起きるので具体的には何もできていない。できることは米朝の関係改善のサポートだろう。

 -被爆地長崎の役割は。

 核廃絶を望んでいる人がたくさんいるということを市民レベルで示すことだ。

 ■ズーム/核拡散防止条約(NPT)

 米ロ英仏中の5カ国に核兵器保有を限定し、核軍縮交渉を行う義務を規定している。1970年発効。日本など約190カ国が加盟している。事実上の核保有国であるインド、パキスタン、イスラエルは未加盟。NPTの運用状況を点検する再検討会議が5年ごとにあり、その間は準備委員会が開かれる。

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