3市議選 終盤情勢

 長崎、佐世保、大村の3市議選が終盤を迎えた。各市で混戦模様となる中、局地的な票の奪い合いも見られる。まちの未来像や政策を懸命に訴えながら票の上積みにしのぎを削る候補者たち。21日の投開票日に向けて、舌戦は激しさを増している。

 ■長崎市/新人同士の争い激化も

 定数40人に対し現職32、元職1、新人12人の計45人が出馬した長崎市議選。実績や知名度を一定持つ現職が安定した選挙戦を展開する中、新人同士の激しい議席争いも予想される。8年ぶりに展開されている市長選の立候補者と“共闘”する動きも出ている。

 「組織も後ろ盾もないが今の議会に新しい風を吹き込みたい」。15日、ある新人候補は地元での街頭演説で長崎の活性化を懸命に訴えた。そこに市長選立候補者の一人が登場。計20分間の合同演説を終え、約100人の住民を前にがっちりと握手を交わした。

 別の市長選立候補者の決起集会には市議候補計6人が駆けつけ、会場で名前の紹介を受けた。共闘する新人の一人は「知名度を考えれば票も期待できる」。

 市北部出身の女性新人は地元を隅々まで巡り「もともとは現職が入り込んでいたが、自治会の協力で盛り上がってきた」と手応えを語る。最終盤は市中心部の街頭演説で「女性票」を狙う。投票率が50%を切るとの見方が強まる中、浮動票の奪い合いも熱を帯びる。

 一方、現職の方も油断は見えない。あるベテランは毎日2時間の“桃太郎作戦”を決行。「直接話をしないと」とまちを練り歩き、地盤以外の地域でも個人演説会をこなしている。

 争点の一つは人口減少問題。街頭演説が集中する中心部では「人口流出に歯止めを」「未来の若者のために」との訴えが多く聞かれる。

 一方で、市民の間でも賛否が分かれるMICE(コンベンション)施設を巡る論争は市長選とは対照的に低調の様子。賛成派の市議候補は「周りに反対派も多いから、はっきりとは言わない」と漏らす。南部出身の候補者は「地元住民は関心が薄いから」と個人演説会でMICEには触れず、地域の政策を主に語る。票の上積みを目指し各者各様の訴えに力がこもる。

 ■佐世保市/立候補増え混戦模様

 定数33に対し、前回より4人多い44人が立候補した。これまで市議会をけん引してきた複数のベテランが引退。新人は7人多い17人、元職は2人多い3人が参戦し、混戦模様となっている。

 地区別では、住宅が多い相浦地区やその近隣での争いが目立つ。現職のほか、重鎮議員の後を継ぐ20代新人、市議3期の経験を持つ元職らがしのぎを削る。大野地区も若い新人らが挑戦し、激しい票の奪い合いになっている。

 合併旧6町では、吉井町から新人2人、鹿町、江迎両町からそれぞれ現職と新人が名乗りを上げた。離島の宇久町は、合併して初めて地元候補がおらず、島外の陣営が支持獲得に動いている。

 にわかに注目されているのが、昨年春に陸上自衛隊水陸機動団が発足して増加した自衛隊票の行方だ。ある陣営は「隊員の家族を含めると相当な票田だ」と気に掛ける。女性は3人が挑み、複数の議席を確保できるかが焦点となる。

 各候補とも地元票だけでは安心できず、中心部などに入って票の掘り起こしに躍起になっている。ベテランの引退と新人の乱立で票は分散するとみられ、当選ラインは前回を下回り、2千票を割り込むという見方がある。

 前回の投票率は、市長選が無投票となったため、51.74%と低迷。今回は8年ぶりに市長選があるため、「持ち直すのではないか」と期待する声が出ている。

 ■大村市/浮動票の行方に注目

 現職20、元職1、新人10の計31人が定数25の議席を争う大村市議選は、候補者が乱立している大村、竹松両地区を中心に、浮動票の取り込みなど、それぞれが最後の追い込みにしのぎを削っている。

 同市では2016年度から若者の選挙への関心を高めようと、「票育事業」を展開。こうした啓発活動を背景に、16年の参院選、17年の衆院選、昨年の県知事選では、投票率がいずれも前回実績を上回った。

 だが、統一地方選第1ラウンドの県議選は、有権者が前回から4千人ほど増えたが、投票率は51.53%と低迷。多くの陣営は「盛り上がりに欠ける。市議選も前回(57.08%)を下回る」とみる。

 現職の一人は「当選ラインは1100~1200票。地元を固めて、ほかを削りにいくしかない」と厳しい表情。当落線上に複数の候補がひしめいているとみられる中、市長や県議に応援を求める陣営もあり、集票合戦は日増しに熱を帯びてきた。

 園田裕史市長と、県議選で初当選した北村貴寿氏がそれぞれ前回の市議選で獲得した票は計5991票。その票の行方にも注目が集まる。

© 株式会社長崎新聞社