長崎市長選 終盤情勢 批判強める新人3人 現職は打ち消し躍起

各候補者は街頭演説などで舌戦を展開、票の行方が注目される=長崎市内

 長崎市長選は21日の投開票に向け終盤戦に入った。届け出順に新人で前県議の高比良元(66)、4選を目指す現職の田上富久(62)、新人で前市議の橋本剛(49)、新人で社会福祉法人理事長の吉富博久(74)の4候補=いずれも無所属=が懸命に支持を訴えている。大型事業計画などを巡り新人3人が現職批判を強める一方、現職は打ち消しに躍起となっている。
 「可もなく不可もない市政運営に甘んじていたら、長崎はしぼんでしまう」。高比良候補は17日の街頭演説で、市政の刷新と、MICE(コンベンション)施設や新市庁舎整備計画の見直しを訴えた。
 大きな支援組織はなく、「厳しい選挙は覚悟の上だが、皆さん頑張れと言ってくれる。愚直に政策を訴える」と高比良候補。地盤の市南部の支持を頼りにしつつ、陣営側が「現職や橋本氏が強い」とみる中心部への食い込みを目指す。
 一方、財政運営と大型事業の推進を中心に、新人3人の批判にさらされている田上候補。16日の個人演説会では財政運営について「長崎に合う方法を選び、堅実にやってきた。周りには『大丈夫』と言ってほしい」と批判を打ち消した。
 陣営は経済界の重鎮らが名を連ねるが「選挙のプロがおらず、準備に不安もあった」と選対幹部。だが労働、建設関連など多くの団体が推薦、公明党議員も支援に入り「ここに来て勢いづいた」と手応えを語る。
 「今こそ必要なのは市民の力だ。力を貸してほしい」。橋本候補は16日の街頭演説で、現職が12年前の初当選時に掲げた「市民力」を引き合いに出し、大型事業や住民投票実施を求める市民運動の続発などを巡り、現職批判を展開した。
 住民投票関係者をはじめ、現職を支持していた企業、連合自治会などの一部も支援に回る。知名度は現職に及ばないものの、選対関係者は「ギアが入り、いろんな人が動いている」と追い上げムードを強調する。
 5期20年の市議経験が売りの吉富候補は、大型事業の凍結と福祉、教育の充実などを訴えている。17日の街頭演説では、市の人口流出に歯止めがかからない現状に「(現職は)3期12年で手を打てなかったのに、4期16年なんてとんでもない」と声を張り上げた。
 草の根活動で支持を訴えており「どれだけ票を取れるか分からないが関係ない。市民の意識を変えたい」と吉富候補。陣営関係者は「市民の反応は予想以上」と話し、前を向いた。
 舌戦が熱を帯びる一方、低迷した先の県議選の投票率を踏まえ、市長選の投票率は40%台後半にとどまるとみる向きが多い。浮動票の行方もにらむ各陣営。有権者の関心をどこまで高められるか注目される。

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