幅広い芸術の精華一望 ガウディ、ピカソ…「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」 10日から長崎県美術館

ルマー・リベラ《休息》1902年頃 油彩/カンヴァス 個人蔵

 19世紀中ごろからスペインのカタルーニャ自治州の州都バルセロナに咲き誇った芸術の精華を紹介する「奇蹟の芸術都市バルセロナ展~ガウディ、ピカソ、ミロ、ダリ-美の巨星たちを育んだカタルーニャの煌(きら)めき」(長崎県美術館など主催、長崎新聞社共催)が10日、長崎市出島町の長崎県美術館企画展示室で始まる。絵画を中心に彫刻、家具、宝飾品、図面など多様な作品約150点を展示する。

 地中海に面するバルセロナは、古代からの豊かな歴史があり、19世紀の産業革命で経済・文化面の先進性を併せ持つ都市に成長。1888年に開催された万国博覧会により国際都市として地位を本格的に固めた。同展では59年の都市計画の誕生から、スペイン内戦(1936~39年)に至るまでの約80年間の芸術文化を紹介する。

 第1章は都市計画の図面、映像などを展示。バルセロナ市の近隣の地図と都市拡張案が示されたリトグラフ(1861年)を見ると、過度な人口増加に悩まされ旧市街の市壁を取り壊し、周辺に碁盤の目のように市域を拡張する計画を立て、それが現在の都市の礎になっていることが分かる。

 第2章では、ブルジョワたちの優雅な暮らしの一端を紹介。建築家アントニ・ガウディがデザインした椅子、手掛けた住宅建築の図面、ブルジョワらに好まれた画家ルマー・リベラが裕福な生活の一場面を描いた油彩画なども並ぶ。

 このほか、現在の国際的なジュエリーブランド「マリエラ」の祖となる宝飾デザイナーのリュイス・マスリエラらの宝飾品も並ぶ。マスリエラが豪華に金、ダイヤモンド、七宝などを使った宝飾品「バルセロナ上空の飛行機」(1905年頃)は当時まだ飛び交っていない飛行機をモチーフに、時代を先取りしたデザインも見どころ。

 第3~6章は、変化する美術の動向などを紹介。第4章では、先鋭的な芸術家たちのたまり場になっていたカフェ「四匹の猫(アルス・クアトラ・ガッツ)」や、常連だった若かりしパブロ・ピカソらの仕事を紹介。第5章では、カタルーニャの民族舞踊が描かれたタイル壁画(23年)など、ローカルな文化に根差した牧歌的な作品などを展示する。第6章では、第1次世界大戦の戦火を逃れるようにフランスなどから前衛作家が流入した10年代から、スペイン内戦により制作活動が寸断されるまでの芸術活動を振り返る。世界的画家サルバドール・ダリ、ジュアン・ミロらの作品が登場する。

 長崎県美術館の稲葉友汰学芸員(26)は「幅広い芸術の精華を一望でき、バルセロナの都市の物語と捉えても見応えがある」と話している。観覧料は一般1200円、大学生・70歳以上千円。高校生以下無料。同展は6月9日まで。4月22日、5月13、27日休館。

イルダフォンス・サルダー《バルセロナ市の近隣の地図とその都市拡張案》1861年 リトグラフ/紙 カタルーニャ建築協会/個人蔵

© 株式会社長崎新聞社