長崎の音楽家・寺井一通さん 楽曲「生きる」完成

 沖縄県の浦添市立港川中3年、相良倫子さんが昨年6月の「沖縄全戦没者追悼式」で朗読した平和の詩「生きる」に心を動かされた長崎県長崎市の音楽家、寺井一通さん(70)が詩に曲を付けた。寺井さんが主宰する被爆者歌う会「ひまわり」などが、5月に千葉県佐倉市で開く東日本大震災のチャリティーコンサートで初めて披露する。寺井さんは「『寺井さん、しっかり』とまるで相良さんに背中を押されているように感じながら作った」と話している。

 「生きる」はゆったりとした曲調で、約21分の楽曲。相良さんが読み上げた「平和とは、あたり前に生きること」という一節に、寺井さんは特に共感。「今、日本に生きる人たちと共有したい」と考え、手紙で作曲を打診し、7月に制作を始めた。

 相良さんの詩は散文形式で、「感覚器」など「歌詞にはあまり出てこないような言葉」が使われている。寺井さんは、メロディーを付けることに「すさまじく苦労すること」を覚悟。10月末に一度完成した楽曲を、歌詞をより強く伝えるため作り直したと明かした。聞きどころは、冒頭の「私は生きている」の部分と言う。「女の子が摩文仁の丘に立ち、風や光を受けながら言う『私は生きている』宣言であり、沖縄の実情や74年前に何があったか、『生きる』というタイトルの詩で何を伝えようとしているかにつながる」と語った。

 5月のチャリティーコンサートでは、寺井さんが主宰し指導する「ひまわり」と千葉県の「いのち輝け!合唱団」のメンバーら約40人が、ピアノなどの伴奏に合わせ歌う。「ひまわり」の田崎禎子会長(78)は「『もう二度と過去を未来にしないこと』という部分に二度と戦争を繰り返さないという思いが詰まっている」とし「基地問題で揺れる沖縄の現状に思いを向けてほしい」と語った。寺井さんは「いつか生の演奏を相良さんに聞いてほしい」と話した。

5月のチャリティーコンサートに向け練習に励む「ひまわり」メンバー=長崎市大黒町、松藤プラザ「えきまえ」いきいきひろば

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