<再生への視点 統一地方選を前に>・11 雲仙市区 農業振興 産地強化で少子化対策 基盤整備し若手定着図る

 なだらかな斜面地に段々畑が広がる雲仙市吾妻町山田原(やまだばら)地区。名産のブロッコリーの収穫などが最盛期を迎え、JA島原雲仙雲仙ブロッコリー部会の本多幸成部会長(60)が作業に汗を流していた。
 農業機械が入れないような地形だったが、合併前の旧町などが1997年から約32億円を投じ、約100ヘクタールを基盤整備。農作業の効率化が図られ、「耕運機や種植え機が使えるようになり、ずいぶん楽になった」(本多部会長)。総合集荷場も建設され遠距離市場への出荷量も増加。ブロッコリーは2017年度に1370トン(約6億3千万円)を出荷し、右肩上がりだ。
 雲仙岳を中心に丘陵地帯、平野部が広がる島原半島は温暖な気候と湧水、肥よくな土壌を生かし、農業が盛んな土地柄。16年の本県農業産出額約1582億円のうち、島原半島3市が計約730億円と4割以上を占め、中でも雲仙市は県内一の約277億円を誇る。
 一方で、高低差を伴う島原半島の地形がもたらすのはメリットばかりではない。傾斜地で細分化された農地も多く、農業機械が入れないような山間部を中心に高齢農家の廃業も目立つ。市によると、05年に4396戸だった農家数は15年には3529戸と約870戸減少。40年前と比べ半数以下に落ち込んでいる。市は合併前の旧町時代から国や県と協力して基盤整備に着手。農道の拡幅や農地集約などの土地改良は、農家減少に歯止めをかけるために不可欠だ。
 こうした基盤整備と並行し、市は新規就農者確保にも注力する。東京、大阪などで開催される農業相談会で就農支援や研修制度をPR。移住者を含め、17年度は42人が新規就農した。市は「都心部では田舎生活へのあこがれが強い。機を捉えて多くの人材を呼び込みたい」と意気込む。
 実際、後継者の増加とともに、子どもの数が増えた生産地もある。市と県が11年から基盤整備をした国見町八斗木(はっとぎ)地区。ブランド品の「八斗木白葱」が好調だ。市立八斗木小の児童数は12年度の40人から本年度は60人に増加。3年後は70人に達する予測もあり、「農家の安定が人口減少対策にもなるという明るい兆しが見えた」(県)。
 市と県は山田原と八斗木の2地区を参考に、現在、市内5地区で基盤整備を進めており、産地強化で少子化対策や定住促進につなげたい考えだ。「若手も増えて活気が生まれた。農地改良の先進例として頑張っていきたい」。本多部会長は、そう夢と目標を語る。

整備されたブロッコリー畑が広がる山田原地区=雲仙市吾妻町

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