「進展なく残念」 長崎の被爆者ら落胆

 米朝首脳会談で北朝鮮の非核化が合意に至らなかったことを受け、長崎の被爆者らは28日、「進展がなく残念」「譲歩の姿勢がない」と交渉の停滞感に落胆した。専門家は非核化の実現に向けた段階的な措置の必要性を指摘した。
 「両首脳の表情が硬いのを見て、完全な非核化は難しいと思っていたが…」。動向をニュースで見守っていた県平和運動センター被爆連の川野浩一議長(79)は「期待が小さかったとはいえ、進展が見られず非常に残念」と肩を落とした。「北朝鮮が核を完全放棄するためには米国の大きな見返りが必要だろう。非核化の実現は時間がかかりそうだ」と懸念も示した。
 被爆者の山脇佳朗さん(85)は「お互いに自国の利益を求める下心が透け、譲歩する姿勢が見られなかった。米国だけでなく中国やロシアが関わらない限り、北朝鮮の非核化は難しいのではないか」と話した。
 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の鈴木達治郎センター長(67)は「合意できるところから確実に一歩一歩進めることが大事。まずは両国間で核施設の査察や現地事務所の開設に合意し、コミュニケーションを密に取ることが必要だ」と段階的な進展を見据えた。
 軍事評論家の前田哲男さん(80)は「関係が険悪化したとの印象はない。米軍の軍事演習や北朝鮮の弾道ミサイル発射が再開すれば、連動する米海軍佐世保基地や海上自衛隊の動きが活発化することもあるが、ただちに情勢が変化するとは考えにくい」と分析した。
 長崎市の田上富久市長は「両国政府には、国際社会を危険にさらすことがないよう、非核化に向けて真摯(しんし)に努力されることを望む」とのコメントを発表した。

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