銭座防空壕 全15カ所撤去 長崎新幹線建設現場 市民団体は反発

 九州新幹線長崎ルート建設現場の長崎市天神町で確認された防空壕(ごう)群について、工事発注元の鉄道建設・運輸施設整備支援機構は26日までに全15カ所の壕を撤去した。74年前の長崎原爆投下時に市民らが避難した「原爆遺構」が姿を消した。保存運動を続けた市民団体は反発の声を上げた。
 同機構が26日に明らかにした。昨年2月に確認されたが、同機構は保存しない方針を示し工事を進めていた。
 保存を巡っては、長崎の5団体が同4月に市民団体「銭座防空壕群を保存する連絡会」を発足。長崎市に対し、同機構に保存を働き掛けるよう求める要請を重ねたが、市は被爆の痕跡がないなどとして保存しない姿勢を貫いた。
 撤去を受け、同会の平野伸人さん(72)は「長崎市は最初から保存に後ろ向きな姿勢で聞く耳を持たなかった。貴重な遺構がまたなくなり残念としか言いようがない」と落胆。被爆者の竹下芙美さん(77)は「戦争や原爆被害を世界に伝える被爆遺構として残すべきだった。原爆の風化がまた進むのではないか」と懸念した。

防空壕が全て撤去された九州新幹線長崎ルート建設現場=長崎市内

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