ゲーム感覚の平和学習 高校生署名活動OB発案 鳥巣さんらプログラム

 「学ぶ」から「解決策を考える」へ-。高校生1万人署名活動実行委員会OBの鳥巣智行さん(35)=長崎市出身=など東京都在住の有志の会社員ら4人が、言語カードなどを使ったゲーム感覚の平和学習プログラムを考案した。長崎、広島を訪れる修学旅行生の「事前学習」と位置付け、希望する学校へ有料で出向いて指導。東京都の小、中学校や高校を皮切りに1月から売り込む考えだ。
 長崎の修学旅行生に対する平和学習は、原爆資料館の見学や被爆者の体験談を聞くなど「学ぶ」が中心。鳥巣さんは「『戦争や核兵器はだめ』と認識させることはできるが、具体的に争いを解決し平和につなげる仕掛けが不十分」として、昨年から新たな平和学習プログラムを模索してきた。
 テーマは「過去を学ぶ」「相手のことを想像する」「解決策を考える」など。
 具体的には「解決策を考える」では、「夜の-」「飲む-」「-力」など100種類の言語カードを1枚ずつめくり、事前に定めた「核兵器」などのキーワードを「-」に当てはめる。例えば「夜の核兵器」という言葉ができたら「午後11時2分に核廃絶を考える若者の集会を開こう」といった形でアイデアを出す。
 「相手のことを想像する」は、本物のケーキを切り分けてもらうが「均等はだめ」がルール。じゃんけんや譲り合いなど平和的な解決法を考えてもらう。
 「過去を学ぶ」は、鳥巣さんらが2010年に制作した、被爆者の体験談などをデジタル化した「ナガサキアーカイブ」を使用する。
 プログラム実行メンバーは鳥巣さんのほか、「ヒバクシャ国際署名」キャンペーンリーダーの林田光弘さん(26)=長崎市出身=ら4人。プログラムは有料。45~60分間で1人当たり千~2千円程度を想定している。鳥巣さんは「将来は一般社団法人などの形で組織化し、全国の学校や一般人、企業にもサービス提供したい」と話している。
 米ニューヨークの軍縮教育家、キャサリン・サリバンさん(51)は「被爆者の体験を、自分ごととして捉えてもらうには、語り手と聞き手のコミュニケーションをつくることが大事」と指摘した上で「若い世代に被爆体験を伝えるのは、証言だけでなく、アートやダンスなどさまざまな表現方法で若い世代を巻き込むことが必要。新しいプログラムは平和問題を含め、現実を批判的に考える力を育てる一助になるのでは」と評価した。

◎長崎での修学旅行生の平和学習

 長崎市で修学旅行生が受ける被爆遺構巡りや被爆体験講話、長崎原爆資料館の見学などの平和学習は、長崎国際観光コンベンション協会や長崎平和推進協会などが実施。長崎国際観光コンベンション協会によると2017年、長崎市を訪れた修学旅行生は29万4800人。同年度、同協会が被爆遺構巡りを有料で案内した修学旅行生は、約400校3万3千人だった。また同年度、長崎平和推進協会による被爆体験講話は、市内の学校などを含めて1253件約16万2688人が受講した。

平和学習プログラムの言語カード(左上)と、ナガサキアーカイブ(右上)、プログラムを実行する鳥巣さん(左)ら4人の写真のコラージュ

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