地域おこし協力隊任期終え 町内で起業した飯田さん 一番楽しそうな道で再出発

 東彼川棚町で地域おこし協力隊として活動した飯田千織さん(28)が3年間の任期を終え、12日に起業する。縁もゆかりもない町で奮闘した3年間。今度は個人事業主として、気軽に集い、語らう「宅飲み屋」や、放置空き家の管理サービスなど一風変わった仕事で町の活性化に貢献しようと意欲を燃やす。
 飯田さんは佐賀県唐津市出身。都内での不動産会社勤務などをへて、2015年12月に町の地域おこし協力隊に着任した。
 前から地域おこしに関心はあったが、活動は試行錯誤の連続だった。町のシンボル、クジャクの羽を手に「わらしべ長者」よろしく物々交換で町内を渡り歩いたり、戦争遺構「片島魚雷発射試験場跡」の独特な景観に目を付けコスプレイベントを企画したり…。活動はブログや会員制交流サイト(SNS)でこまめに発信した。
 任期を終え、地元に帰るか、町外で就職するか、それとも起業してこの町で暮らすか-。さまざまな選択肢の中から「一番楽しそうな道」を選んだ。中心部の栄町商店街に事務所を構えて再出発する。
 「宅飲み屋CaN(キャン)」は、全国のご当地缶詰をつまみに缶ビールを飲みながらアットホームな雰囲気で過ごせる店。「缶」を英訳した店名には「何でもできる」という意味も込めた。「机を並べた会議では出てこないアイデアが生まれる場所に」と願う。空き家サービス「カッテグチ」は、町内の空き家の換気や通水などを代行。将来的には所有者と移住者の仲介役も担う構想だ。
 見ず知らずの自分を受け入れ、励まし、手を差し伸べてくれた町の人々こそが川棚の魅力と気付いた。「協力隊の自分が逆に協力してもらった。これから恩返しをしたい」。11月29日に開いた活動報告会で、力強く宣言すると、集まった町民らが拍手でねぎらった。
 個人事業主としての試行錯誤が、再び始まる。「この町が好きで、才能やスキルを持っている若者はたくさんいる。『飯田にやれるなら自分にも』と思ってもらえるとうれしい」。地域おこしはまだまだ続く。
 営業時間は「宅飲み屋CaN」が午後5時~10時(水、木曜定休)、「カッテグチ」が午前9時~午後4時(水曜定休)。(電0956・76・8680)

飯田さん(右)が新しく開店する「宅飲み屋CaN」。11月のイベント「まちバル」でプレオープンした=川棚町
活動報告会で3年間を振り返る飯田さん=川棚町

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