改正水道法成立 県内「民営化」検討ゼロ 小規模自治体 メリット見いだせず

 6日に成立した改正水道法で水道事業運営の民間委託が促進されることになった。長崎県内では検針など一部業務を民間に委託している自治体はあるが、運営全般の「民営化」を現時点で検討している市町はないことが、本紙の取材で明らかになった。「水」という重要な生活インフラを民間に委ねることへの懸念が強い上、小規模自治体では民営化のメリットが見いだせないことなどが理由。ただ経営悪化を想定し水道料金引き上げの必要性に言及する自治体もあり、県は事業効率化に向け市町と広域連携を協議する方向で調整している。

 西彼杵半島北部に位置する西海市。2005年4月の5町合併による市発足時、人口は約3万5千人だったが、今年10月には約2万8千人にまで落ち込んだ。市によると、給水人口の減少で水道事業の経営が悪化。16年度には水道料金を24%値上げせざるを得なかった。現在は20立方メートル当たり4510円で、県内では平戸市に次いで2番目に高い。
 今後も老朽化した水道管の更新などで経営は厳しいが、小島明副市長は「水道は公共セクターが責任持って運営すべきだ。(人口が多く収入が見込める)大都市は民営化のメリットがあるのかもしれないが、西海市のように面積が広く集落が点在する地方の自治体では思い付かない」と話す。
 諫早市も「黒字運営を続けており、安全安心な水を恒常的に提供できる道を歩いていける状況と判断している」とし、現時点で民営化は検討していないという。
 一方、今後経営が悪化すれば「料金引き上げを検討する必要がある」とした自治体は複数あった。
 長崎市は今回の法改正で民営化より「広域連携」に着目。人口減少で水需要が減った場合、近隣自治体との連携で施設共有などの事業効率化が見込めるという。
 県は県内を7ブロックほどに分け、広域連携に向けた勉強会を開きたいとしている。市町の担当者と現状や課題を共有し、経営基盤の強化策を協議するのが狙い。

長崎県内市町の家庭用水道料金

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