米粉ベースの離乳食 ママ目線で販路拡大 長崎市の「米粉屋」平田さん 東京フェスで女性起業家グランプリ受賞

 長崎県産米を原料に米粉を製造販売する「米粉屋」(長崎市)が、首都圏の百貨店や食品専門店で販路を広げている。特長はママ目線で開発した離乳食などの商品。夫と共に経営と商品企画を担うブランドマネージャー平田順子さん(40)に開発の経緯や、家庭と両立する秘訣(ひけつ)について聞いた。

 平田さんは長崎市出身。2004年、結婚を期に仕事を辞め専業主婦になった。米粉屋は、県学校給食会を定年退職した平田さんの父親が11年に設立した。給食で小麦粉を口にできない子どもがいた経験から「食物アレルギーがある子どもも安心して食事できるように」との思いからだった。当時は米粉について「おいしくなさそうというイメージがあった」と平田さんは振り返る。しかし料理に使ってみるとそのおいしさに驚いた。
 シチューやカレーのルーや麺の原料になるだけでなく、揚げ物の衣として使えばさくっと仕上がる。「アレルギーの代替食と思われるのはもったいない。多くの人においしさを広めたい」。そう強く思うようになった。夫の賢史(さとし)さん(40)と二人三脚で、創業時から米粉を使った加工品の商品開発に着手。12年に父から全ての事業を継いだ。

 開発の際に大事にしているのが、3歳の息子と小学4年の娘を育てる自身の思いや体験を生かすこと。「ママ目線」で必要な商品を考え、モニターの意見を参考に味や使いやすさを追求する。そうして生まれたのが、米粉をベースにした離乳食。開けてすぐに食べることができ、安心して子どもに食べさせることができると好評を得ている。首都圏のバイヤーの評価は年々高まり、米粉と並ぶ人気商品になった。
 9月には、人気女性誌「VERY」が主催した東京都でのフェスで、女性起業家が来場者に商品やサービスをPRするイベント「未来のミセスCEO」にブースを出店。事前の書類審査を含む全国100組以上の応募者の中から、来場者の商品への評価などを基に優れた女性起業家に贈られるグランプリに輝いた。受賞を記念し、11月には長崎市内の書店が、店内でトークイベントを開催。集まった女性たちに平田さんは「主婦、ママだからこそできる仕事、生まれるサービスや商品がある」と呼び掛け、「自分の役割を一つに絞る必要はない。多様性を持つことで仕事も家庭もうまくいくと感じる」と語った。

 本社は長崎市扇町。事務所では就労継続支援B型事業所を運営し、約25人が働いている。店舗はJR浦上駅前(川口町)にあり、米粉スイーツが楽しめるコーヒースタンドになっている。
 忙しく、子どもと過ごす時間は少ない平田さんだが、出張していなければ家族全員で晩ご飯を食べることを心掛けている。夫婦で家事の分担は特に決めていないが、共に台所に立つことが多いという。今後の目標は「日本だけでなく海外にも米粉屋の商品を広めること」。夫婦の挑戦は続く。

米粉屋の商品
トークイベントで女性にエールを送る平田さん=長崎市茂里町、TSUTAYA BOOKSTORE

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