多様な表現で実相伝達を 分科会「被爆の継承」考える

 長崎市で17日に開かれた「核兵器廃絶-地球市民集会ナガサキ」の分科会「被爆の継承」では、米国の平和活動家や被爆者ら計4人が体験や活動を発表した。
被爆体験談に加え、本や音楽など多様な表現手段を通して被爆の実相を伝えることが大切だとの意見が出た。

 作家のスーザン・サザードさん(62)は、2015年に米国で出版した長崎の被爆者の人生を追った書籍「ナガサキ」について、20年夏までに日本語でも出版することを紹介した。米国では、日本への原爆投下は正しかったという認識が根強いが、「ナガサキ」を読んで考えを変える人がいることも報告した。

 サザードさんは被爆体験談は「聞き手が個人的に捉える上で有効だ」と指摘。米国人に被爆体験を聞かせた後、核兵器の倫理性や必要性を再考してもらう活動を続けていると話した。

 軍縮教育家キャサリン・サリバンさん(51)はダンスや写真、紙芝居、音楽を通して被爆体験の継承に取り組んでいる人々やイベントを紹介した。被爆70年の15年にニューヨークであったコンサートでは、被爆者でつくる長崎の合唱団「ひまわり」の歌唱に多くの米国人が感動していたという。サリバンさんは「次世代のために核を廃絶し、美しい地球を守ろう」と呼び掛けた。

 被爆者の門隆さん(82)=長崎市=はこの日、初めて人前で体験を語った。9歳の時に爆心地から3・5キロの銅座町の自宅付近で被爆。父と兄を失い、長崎駅周辺で多くの死体を見たことを涙ぐみながら話した。門さんは「戦争は恐ろしい。後世のために語り継いでいきたい」と決意を述べた。

 第21代高校生平和大使で被爆3世の山西咲和(さわ)さん(17)=県立諫早高2年=は、「多くの人に、祖母の被爆体験や自分の平和への思いを伝えていく」と語り、今後の活動に意欲を示した。

 市民ら約300人が聴講。会場からは「何を継承すればいいのか」との質問があり、サザードさんは「被爆の実相を伝えることが、継承の重要な要素。伝えることには、最終的に被爆者の声を核廃絶の政策につなげる役割があり、私の目標だ」と答えた。

人前で初めて被爆体験を語る門さん(左端)=長崎市平和会館

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