人気推理シリーズの新作は長崎が舞台。明治改元から150年の節目をきっかけに巻き起こる歴史論争を巡り、ある事件が発生。十津川警部が捜査に臨む。
事件は、長崎で取材していたライターが失踪したことに始まる。同僚が捜すうちにNAGASAKIクラブという謎の歴史研究グループと出会い、失踪したライターもその一員であることを知る。まもなくクラブの1人が京都の疎水で死体となって見つかり-。
事件の謎解きとともに、主軸になるのは幕末維新史の再考だ。長崎は維新の「勝ち組の本場」として描かれるが、賊軍と呼ばれた会津など、立場違えばまた異なる歴史が見えてくる。明治維新150年か、戊辰戦争150年か-。
「著者のことば」として、「(今年は)久しぶりに、歴史論争が起きるのではないか、それなら長崎がマークされるだろうと期待していたのに、なぜか、くすぶっただけで、燃えあがらない」と記載。
登場人物たちが唱える歴史論は定説から飛躍した驚くようなものだが、その情熱からは、150年という節目に関心がそれほど高まらない状況への問いかけも感じられる。
祥伝社刊。新書判、248ページ。950円。